ざっくりまとめると…
- イノベーターのメンタリングで「原体験」の深掘りを重視
- 原体験とプロダクトを繋ぐストーリーに戦略と戦術が隠れている
- 誰よりも考え、試行錯誤している人の心の中に答えがある
私が起業家や経営者のメンタリングをするとき、必ず「なぜその事業を始めたのか」のヒアリングから始めます。そして、それは特に「原体験」の深掘りに集中的に時間を割きます。
なぜならば、原体験とプロダクトをストーリーで紐付けると、そこから戦略と戦術が見えてくるからです。
新しい価値を創造しようとしているイノベーターは時に、エンドプロダクトに集中するあまり、エンドプロダクトのことしか考えられないようになります。それに嵌ってしまった人が、戦略や戦術のない事業推進をしてしまい、迷子の森へと迷い込むのです。
しかし、本質的にはその事業のことを誰よりも考え、誰よりも思考実験し、誰よりも試行錯誤しているのがイノベーター自身で、その意味では「戦略」も「戦術」も、本当はその心の中に存在するのです。
それを表出するためのメソッドとして用いているのが「原体験」の深掘りです。
2つの方向からストーリーを深掘りしていきます。一つは原体験そのものをヒアリングし、そこからWhy→How→Whatと具体性をあげていく方向。もう一つは今やっているプロダクトそのものから、What→How→Whyと抽象度をあげていく方向です。
原体験を自身の言葉で語れるイノベーターは稀です。たいていエンドプロダクトについては十二分に語れますが、なぜそれをやろうと思ったのか、その背景にあった出来事については無頓着です。
しかし、この左右両方の方向から原体験とエンドプロダクトの結びつきをロジカルに繋ぐと、綺麗なストーリーが描けます。
仮に答えが出ず、ストーリーがつながらない場合は、今とっているHowやWhatが戦略的に正しくない可能性があるためピボットする必要があります。それには、HowやWhatを横展開させます。「他に方法・手段・アイデアはないか」と。そうすることで、あるべき形でのピボットが容易になります。
原体験を起点にエンドプロダクトまでをストーリーとして綺麗に(腹落ちがしやすいように)描ければ、自ずとそこに戦略(何をすべきで何をすべきでないか)と戦術(アクションプランと優先順位)が必ず見えます。
そこでこだわるべきは個人的な感性に基づく「美しさ」です。自分が美しいと感じるストーリーが描けたとき、グロース・スケールに向けた大きな、そしてとても重要な一歩が踏み出せたといっても過言でないでしょう。