「TVは死んだ」
最近、よく言われるようになった言葉だ。
マスマーケティングとして、マスへの影響力が強かった時代はすでに過ぎ去り、ターゲットをより絞ったマーケティングが有効であるとする説を唱える方が、使う言葉である。
これは、コンテンツとしてのTVに対してよりも、TVCMに対して使われる言葉だ。
だが、コンテンツに対しても批判はある。
先日、TVに出演経験のある方のお話を聞かせていただく機会があった。
出演することによって得られるメリットとデメリットを比較すると、やはりデメリットの方が大きすぎるということである。
メリットとしては、知名度の向上が大きい。雑誌やインターネットでいくら有名になろうと、一般消費者への知名度の向上は、どうやっても無理がある。別の知り合いに、とある業界関係者の間ではすごく知名度が高く、また、雑誌やWebサイトにも寄稿やインタビュー記事などが載るのだが、一般消費者の間では知名度が全くないという方もいるくらいである。
だが、それがデメリットに転じる。知名度が向上すると、俗に言う「有名税」なるものが発生してしまうという。それが一般業務に支障をきたすということである。その方が言うには、顧客の質が低下することが一番の弊害となるということである。
顧客の質の低下で一番大きなものは、「ひやかし」の多さであるそうだ。TVで見たから来てみたという理由で来られると、真剣にサービスの提供を受けに来た方の邪魔となりかねない。また、来て欲しくないと考える人が来ることも弊害となる。
顧客の質の低下と言うと、「客を選ぶのか」と批判が来そうだが、それは当然の権利としてある。顧客が購入先の店舗を選択する自由と同等の権利が、販売元である店舗にもある。質の高いサービスを質の高い顧客に提供するというのはごく自然な考えではないだろうか。会員制のレストランなどは、まさにそのいい例である。
このように、出演する側からみてデメリットが大きくなるのは、やはり、出演する側の意図よりも、スポンサーの意向や「尺」の方が大事で、そちらを基準にコンテンツ作りを行うからである。
放映されると店頭の陳列ががらりと変わるといわれている「おもいっきりテレビ」や「あるある大辞典」などはまさにその典型例で、本当に効くかどうかなんてどうでもよく、スポンサーの意向により取り上げる成分が決定される。まだ、視聴者が気づいていないので騙されて買ってしまう方が多いので、影響力はあるのだろうが、スポンサーではなく、出演する側からみると、そこが大きなデメリットなのである。
だが、TVCMは死んでいるけれども、上記の影響力という点から見れば、まだまだコンテンツは死んではいないと思う。だが、年代が上の層ならともかく、今のインターネット・携帯世代は、「スポンサーの意向」という部分にものすごく敏感である。このままのコンテンツ制作をTV業界が続けていたら、どういう結果になるかは簡単に予想できてしまう。
マスコミは中立な立場で報道すると高らかに謳っているが、それが嘘だとユーザが気づく日もそう遠くはない。