Webサービスは収益が先か、集客が先か

最近、身近な人とこんな議論をすることが多い。
「Webでは、収益をあげるのが先か、人(ユーザ)を集めることが先か」

結論から言えば、ほとんど「鶏が先か、卵が先か」の議論である。
どちらが正しいかという答えなどない。
どちらにもメリットはあるし、デメリットもある。

Webサイトを趣味で運営するならまだしも、
企業として運営している以上、収益を上げねばならない。
そんななかで企業としてどのような結論がより最適なのか。

私の個人的な意見は、
「人を集めることが先」ではないかと思う。

まず、「収益をあげるのが先」という考えでWebサイトを運営することを考えてみる。

そこで、重要視されるのはなによりも営業である。
収益をあげるのは、開発者ではなく営業マン。
営業マンが売ることがまず第一。開発など二の次でもいい。とにかく売れればいい。

悪い言葉で言えば「詐欺的」であろう。
顧客との関係はWin-Loseである。

顧客が納得して印を押したのだから、Win-Winだという風に考えることもできるが、
強引に営業トークで納得させることが果たしてWin-Winと言えるのだろうか。

それは心から納得してると言えるのだろうか。
疑問に感じざるを得ない。

さらに言えば、営業が第一ということは開発は二の次ということでもある。
つまり、Webのコンテンツやサービスは二の次ということになる。ないがしろにされるということである。
それはユーザの満足度やリピート率の低下を意味する。

確かに、SEOを重視し、検索エンジンで上位にあげさえすれば、アクセスは稼げるだろう。
しかし、それは”無意味な”アクセスであり、
満足度が高く信頼してくれるユーザの”意味ある”アクセスではない。

ともすれば、ユーザ・顧客共に信頼を裏切る行為になりかねない。

また、収益をあげるのが先という考えでは、
Web事業の最大の特徴でもある動きやすさが潰される。
Web事業は思い立ったらすぐにローンチできるのがよさである。

特に設備投資もいらず、パソコンと身ひとつで誰にでもサービスの開発・運営ができる。
それこそがよさであるにも関わらず、
「収益があがらなければダメだ」「どうしたら儲かるのか事業計画が必要だ」となれば、

その動きやすさがなくなり、ともすれば儲かる可能性があったサービスが他の誰かによってローンチされてしまう。

だが、利点も確かにある。
まず、収益が安定的に見込めるようになれば、企業運営が安定化する。
そうすれば、次なる投資にも比較的踏み込みやすくなる。
新しいサービスのローンチしかり、設備投資しかり、従業員の増員・技術力向上しかり。

次に、「人を集めるのが先」という考えに立ってみる。

ユーザが集まれば、自ずと収益は発生する。

その収益は、Webサイトによるが広告であったり、サイト買収であったり。

YouTubeが一番の例だろう。
運営費だけで相当な赤字を生み出す企業だが、
Googleによる買収で創業者の懐は温まった。

また、前者とは違い、サービスのローンチの速度も高くなる。
ユーザにとってよいと思ったサービスをどんどん追加することで、
よりよいWebサイトへ近づきやすくなる。

そこに集まるユーザのアクセスは、前者よりも格段に”意味ある”アクセスである。
ユーザの信頼感は比較的高い。

サイト自身の信頼感は、広告主への信頼感にも繋がるだろう。
また、物販であれば、商品への信頼感に繋がる。
すると、必然的に、顧客(広告主等)の信頼にも繋がる。

Webを運営する企業、ユーザ、顧客三者のWin-Winの関係が構築されるわけだ。
理想的なWin-Winの関係だと思う。

また、信頼感が高ければ、
競合他社のいるサービスの提供でも、大きく一歩リードできるとも思う。
Yahoo!がビッターズよりも後にサービスをリリースしたにも関わらず、
大きく溝をあけられたのもこの信頼感がモノをいったと考えられないだろうか。

しかし、前者の利点がそのままデメリットと考えられる。
企業運営がかなり不安定になることである。
収益がいつあがるか分からない状態は、崖っぷちに立っているのと同じことであり、
ちょっと強い風が吹けば、すぐに潰れてしまう。

莫大な資産やその可能性に賭けてくれる出資者がいなければ厳しいだろう。

両点を比較してみると、五分五分とも思える。
それこそ「鶏が先か、卵が先か」である。

しかし、私は「人を集めるのが先」が重要だと思う。
企業としては収益を優先することが最もであることは理解できるのだが、
どうしても腑に落ちない。

私にとって何より大きいのは、”ユーザの信頼感”、”顧客の信頼感”である。

信頼感が大きければ大きいほど、それは収益に繋がりやすく、シナジー効果を生みやすいだろう。
理想的なWin-Winの関係こそが、後々の大事な資産に繋がるとも思える。
企業運営には、様々な企業との繋がりも大事なファクターであるからだ。

皆さんはどちらに主眼を置いて、Webサイトの制作・運営をしているのだろう?
どちらも正しいとは思うが、もし「収益が先」の考えで納得させていただけるなら聞いてみたい。

ビジネスクリエイター、インキュベーター、アクセラレーター、コンサルタント。エンジニアとして、PHP/HTML/CSSのマークアップ言語によるWebサイトの制作、SEOエンジニアリング、アクセス解析アナリストを経験した後、IT領域の技術/潮流をベースとしたエスタブリッシュ企業向けのコンサルタントを経て、複数のIT企業にて、Web/アプリ系、O2O系、IPライツ系の新規事業立ち上げに注力。事業開発から経営企画業務まで、事業および会社立ち上げに関する業務を幅広く経験。また、シードフェーズのベンチャー複数社の立ち上げへの参画や経営戦略・組織戦略・PR戦略へのアドバイザリー、メンター、複数のアクセラレーションプログラムのメンターも手がける。