経営の三大要素「ヒト・モノ・カネ」の時代から、「ヒト・モノ・カネ+情報・技術」の時代、そして、「ヒト・ヒト・ヒト」の時代へと移り変わってきています。「モノ・カネ」は、ベンチャー投資の盛り上がり、オープンイノベーションブームなどにより、以前から比べると調達は容易になりました。また、「情報・技術」は、ヒトによってもたらされるものであり、ヒトが自ら高められるものです。「ヒト」がとにかく重要なのです。
しかしながら、どんな経営者も「ヒト」の採用や育成に苦労しています。
「ヒト」の大切さをみんな理解したからこそ、優秀な人材をいかに採用するか、いかに囲い込むかに躍起になっています。だから、採用は難しいのです。優秀な人材を手元に置くためには、「採用」の方が短期的に成果は出やすいでしょう。しかしながら、もちろんそこには当たり外れというリスクはありますし、優秀な人材が必ずしも企業文化とマッチするとも言い切れません。そんな「外れ」や「アンマッチ」を引いてしまっては、負債としてその人材を抱え込まなければなりませんし、そうなった場合は既存の人材へも悪影響を与えてしまいます。
個人的には、それよりも、人材育成に力を入れたほうが、中期的に・長期的にみると「ヒト」を中心とした企業力の底上げに繋がるはずだ、と信じています。それに異論がある経営者はいないでしょう。その重要性を理解しているにも関わらず、「育成」には苦労してしまっているのです。
それは何故でしょうか?ボクはそのひとつに「人の価値」に対して、あまりにも無頓着であることが原因のひとつではないかと考えます。
よく経営者やマネージメントレイヤーからは、「○○は能力が低い」「○○は使えない」という発言を耳にします。それは、なにを持って「無能」だと言っているのでしょうか。結局のところ、自分自身にマネージメント能力のうちの「人材育成力」が欠けていることを棚にあげて、批判しているにすぎないのだと思います。
本質的には、世の中に能力のない人など世の中にはいません。人はみな誰しも生まれ待った能力「ギフテッド」を持っています。「無能」に見える人は、それを活かせるポジションにいないだけか、それに気づいていないだけなのです。
人材育成の基本中の基本は、その人にどんなギフテッドがあるのか、どんなことにモチベーションを感じるのか、どういうやりかたで成長するのか、など、その人を知ることから始まります。そこにこそ「人材の価値」はあるのです。そしてそれを知った上で、どう育成するかを考えることが重要です。
「○○は能力が低い」「○○は使えない」という発言は、マネージメントレイヤーがそれをしていない、もしくはできていないからこそなされる発言です。人材育成ができていない会社であるのだとしたら、まずマネージメントレイヤーの意識改革から始める必要があるのです。