ソーシャルゲームは、いわゆるカードバトル系タイトルの衰退が進行し、それと平行して(または、要因として)パズドラ、モンストを代表とするネイティブゲームが急拡大していることは周知のことと思う。
モンストに続く第3の大ヒット作を作るべく、各社ネイティブゲームシフトが叫ばれ、事業・組織再編を継続的に行っている。
これにともなって、新たな市場が大きく立ち上がる様相を見せている。
Contents
ソーシャルゲームセカンダリーマーケット、2017年には1,000億市場に
調査によると、スマートフォンゲームセカンダリ市場は、2014年に立ち上がり、主にブラウザ向けゲームを運営する事業者が、事業・組織再編にともない、複数持つ自社タイトルの一部を、ゲーム運営に特化した第三者の事業者へと委託・売却をする動向が見られたという。
2015年は、ブラウザゲーム事業からの転換によりネイティブゲームアプリ事業へと集約を進めるゲーム会社によるブラウザゲームタイトル運営の外部委託や売却需要が本格化し、またこれに対応する運営事業者の参入とサポート体制が進み、218 億円となる見通し。
2016年以降は、ネイティブゲームタイトル運営の外部委託や売却需要も本格化し、スマートフォンゲームセカンダリ市場の成長を後押しすることが予想されるとのこと。運営の外部委託や売却に関する相場が形成され、ゲーム運営に特化した事業者側が委託・売却元の収益性を担保できる条件で運営を引き受けられるサービス基盤が確立されれば、2017 年のスマートフォンゲームセカンダリ市場規模は1056億円に達すると見込まれるという。
【デジタルインファクト調査】スマートフォンゲームのセカンダリゲーム市場は14年は47億円、2017年には1000億円超に拡大する見通し | Social Game Info
セカンダリーの雄、マイネット
セカンダリーといえば、マイネットの上場が記憶に新しい。いち早く市場性に目をつけ、イグニス、gumi、グリー、セガ、アプリボットから事業買収を行い急成長した。
マイネットは、開発ではなく運営に特化しているところが特徴的だ。初期開発と運営では、そこに必要なスキルは微妙に異なる。
抽象的だが、開発にはクリエイティビティが必要であり、運営はPDCAを回す数値分析力と改善力が必要となる。前者の方がよりリソースが必要となり、また人員単価も比較的高くなる。
運営に特化することで、人件費を抑え、かつ、ノウハウの分散を防ぐことができる。
中堅から大手まで続々参入
マイネットの成功を横目にみてか、自社リソースの最適配分かはわからないが、中堅から大手まで続々とセカンダリー市場へ参入している。
グリー
グリー<3632>は、2月4日、第2四半期累計(2015年7~12月期)の連結決算を発表するとともに、東京都内で決算説明会を開催し、ソーシャルゲーム運営の専門会社として「ファンプレックス株式会社」を設立することを明らかにした。マイネット<3928>と協業も展開するという。
スマートフォンゲーム会社のなかには、既存ゲームの運営に充てている人員を減らし、新規タイトルの開発にシフトする会社が増えているとのことだが、運営業務の委託ニーズが強いと判断したという。
グリーの田中良和社長(写真)は、「グリープラットフォームに参画するSAPを見ていると、新規タイトルの開発に着手するため、スタッフを移動させた結果、既存ゲームの運営がおろそかになってしまい、収益を落とすケースが散見された。グリーの持つゲーム運営ノウハウを他社のタイトルにも活用することで、収益を維持あるいは伸ばしていきたい」とコメントした。または、ネイティブゲームアプリがヒットした会社で、一定規模の収益のあるブラウザゲームを持っていた場合、ブラウザゲームを他社に移管・売却することで、ネイティブゲームアプリに社内リソースを集中させたいというニーズも根強くあるとのことだった。
【速報】グリー、ソーシャルゲーム運営子会社ファンプレックス設立 セカンダリー市場に参入 田中社長「グリーのノウハウを活用して維持・拡大させたい」 | Social Game Info
DeNA
ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、10月7日より、DeNAが配信するソーシャルゲームの運営を専門に行う子会社「株式会社DeNA Games Tokyo」(DeNA Akiba)の本格稼働を開始した。
いくつか理由があって、DeNAがネイティブアプリの開発に注力し、ゲームの運営を専門会社に任せるという戦略的な理由があります。一番大きいのは、DeNAは、インターネットサービスの会社であって、必ずしもゲーム会社ではないということです。ゲーム開発・運営の人材を採用する際、ゲーム会社である方が明確な採用基準を打ち出せ、ゲーム好きに来てほしいとアピールしやすいです。
ゲーム関係の人材は、インターネットサービスほど汎用的なものではありませんから。本社で採用すると、例えば、今度からゲーム系の仕事からオートモーティブやキュレーションに異動ということもありますが、当社に入社していただくと、ゲーム運営の仕事にコミットし続けることができます。
今後ありそうな変化としては、コンテンツ運営にかかる人員がさらに増えてくるでしょう。ブラウザゲームであってもスマホ対応が必要ですし、コンテンツのアップデートのボリュームが増えているので、何十人という体制です。今後、100人、150人になっていくという見方もありますね。ヒットメーカーほど人手不足が深刻になるでしょう。スマホ・ソーシャルゲームは運営し続けなくてはならないですから、ずっと人が必要になります。効率化で対応できればいいですが、それにも限界があります。
したがって、結論としては、運営・販売力が重要になること、そして人員不足が深刻化することが大きな変化とみています。そのなかで、全てを自社で賄うのではなく、外部の企業といかにうまくパートナーを組み、不足している部分を補うかが重要になるでしょう。パートナー企業に特定の業務を委託もしくは移管するといったことをやっていかないと厳しいと考えています。
【インタビュー】ゲーム運営専門会社”DeNA Games Tokyo”が始動! 田川啓介社長が事業展開と戦略、業界展望を熱く語る | Social Game Info
クルーズ
クルーズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:小渕 宏二)は、『エレメンタルストーリー』や『アヴァロンの騎士』などで培った、ユーザー様が長期間楽しめる運営ノウハウを活かし、新規事業としてネイティブゲームやブラウザゲームの運営受託、運営権の買収を行うセカンダリ事業へ参入します。
当社は、『ミリオンアーサー エクスタシス』に続き、今後積極的にネイティブゲーム、ブラウザゲームの運営受託や運営権の買収を行っていきます。
クルーズがセカンダリ事業に参入。「ミリオンアーサー エクスタシス」の共同運営を開始 – 4Gamer.net
オルトプラス
長期のゲーム運営を得意とする株式会社オルトプラス(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:石井 武、東証1部:3672、以下オルトプラス)と、ソフトウェアテストのリーディングカンパニーである株式会社SHIFT(本社:東京都港区、代表取締役社長:丹下大、東証マザーズ:3697、以下SHIFT)は、拡大するオンラインゲームのセカンダリーマーケットにおけるトップシェアの獲得を目指し、相互の強みを活かしたゲーム開発・運営からソフトウェアテスト(以下、QA)・カスタマーサポート(以下、CS)までをトータルパッケージングするゲームグロースサービスを開始致します。
セカンダリーマーケットのクライアントのニーズはゲームのコンディションや事業環境によって、ゲームタイトルの一括運営委託だけでなく、品質保証のQA、顧客対応のCS、エンジニアリングリソースやコンサルティングの提供など多様なニーズが存在しております。従来はそれぞれ個別に対応できる事業者は存在しておりましたが、ゲーム運営に必要な全行程をワンストップで行えるサービスは存在しておりませんでした。さらに、長期にゲームを運営した経験のある委託事業者、各種プラットフォームにランキングされるタイトルを運営した委託事業者も存在しておりません。
オルトプラスはこれまでオリジナルタイトルや他社IPを利用した協業タイトルなど、数多くのタイトルを各種プラットフォームにランクインさせ長期運営を行ってまいりました。その運営の実績もあり昨今では運営委託を打診されるケースが増えてきております。このニーズに応えるために、オルトプラスはSHIFTとともにゲーム開発・運営からQA・CSまでをワンストップで提供するゲームグロースサービスを開始するに至りました。
ゲーム運営のAltPlusとソフトウェアテストのSHIFT、ゲーム開発・運営からQA・CSまでを一気通貫したワンストップのゲームグロースサービスを開始! | altplus
今後の市場予測
市場は確実に拡大し続ける
市場そのものは、デジタルインファクトの予測どおり、もしくはそれ以上の伸びで推移するだろう。
母体の規模にもよるが、中堅から大手の企業では、月数億程度の売上では物足りない。これ以上の伸びが見込めないとなったら、次のヒット作を作るためにそこにかけているリソースを新規開発へうつすという判断は常にし続けるはずだ。
ソーシャルゲーム含めエンターテインメント業界は博打性の高い業界だ。1本あたればでかい。それだけで10年は食っていける。しかしながら、必ず当たるという見込みは立てられない。マーケットに出してみないとわからない。
それに加え、1本あたりの開発費が高騰している。どんどんハイリスクハイリターンなマーケットになりつつある。
だからこそ、見込んだ売上規模に到達する見込みがないと判断したら、いち早く損切りしたい。しかしながら、可能な限り投資回収したいという相反する意向が働く。セカンダリーマーケットはそこをうまく補うことができるため大きな需要がある。
また、ソーシャルゲームメーカーは、そしてヒットが出るまで延々とタイトルを作り続ける宿命にある。つまり需要は続く。売却ないし運営受託の案件は、いつまでたっても無くなることはないわけだ。無限に出続ける泉である。
競争環境は激化していく
マイネットは、いち早くこの市場に取り組み独自のノウハウによって成長し、上場することができた。前述の通り、各社の参入も続いている。
しかし、これだけでは世の中にあるソーシャルゲームの本数に対して、つまり、需要に対して、圧倒的に供給サイド、セカンダリーマーケットの事業者の数が足りていない。
今まさにゴールドラッシュが起きている。中堅〜大手では受け切れない案件が必ず出てくるからだ。それは、案件数もそうだが、それ以上に溢れると予想されるのが、規模の小さな案件だ。自社で対応するほどではないが、そこそこ売り上がる案件というのもあるはず。それをみすみす失注するよりは、と、外部へ再委託する流れが出てくる。
現に、中堅や大手ソーシャルゲームメーカーから卒業した人たちが、それこそ雨後の筍のようにソーシャルゲームメーカーとして独立している。
この一時的なバブルは、今まさに参入した企業がその利を得るだろう。さあ、ゴールドラッシュへ飛び込もう。
数年で競争環境は激化していく
しかしながら、今後、競争環境は確実に激化していく。
前述の通り、開発に比べて運営のリソースはかからない。小規模のスタートアップでもある程度受けることができる。
小規模メーカーが乱立すればするほど、受託によるロイヤリティの利率は低下していく。そして、成功する企業が出てくれば出てくるほど、買収価格は高騰していく。
セカンダリーマーケットの事業者にとって、結局のところ、競争優位性は明確化しづらい。そうなると高いロイヤリティを維持するのは難しい。
買収価格は言わずものがな、相手先の能力の多寡ではなく、目先の金額の多寡が重要なファクターとなる。入札業者が増えれば釣り上がるのは市場の原理だ。
セカンダリーマーケットの事業者は、企業の成長戦略はしっかりと描き、この(確実にはじけることが目に見えている)バブルがはじけた時に、どのような戦術をとるのか。今から十二分に考えておかなければならない。