イノベーションは技術革新だけを指す言葉ではない

イノベーション(innovation)はオーストリアの経済学者、ヨーゼフ・アーロイス・シュンペーターの理論の中心概念で、シュンペーターは、企業者(アントレプレナー:entrepreneur)の行う普段のイノベーション(革新)が経済を変動させるという理論を構築しました。

今日、イノベーターとは「技術革新」と訳されることが多いため、Technologyという意味での技術に目が行きがちですが、本来は、経済活動において旧方式から飛躍して新方式を導入することを意味し、シュンペーター自身はイノベーションとして以下の5類型を提示しています。

1. 新しい財貨の生産
2. 新しい生産方法の導入
3. 新しい販売先の開拓
4. 新しい仕入先の獲得
5. 新しい組織の実現(独占の形成やその打破)
ヨーゼフ・シュンペーター – Wikipedia

また、ソニーCEOのハワード・ストリンガーは、2009年1月8日にCESのオープニング基調講演で、成長のための7つのイノベーション分野を語りました。こちらは参考までに。

1)Embracing the fusion of industries 業種を超えた融合商品

2)Adopting a service-enhanced philosophy 顧客サービス重視の哲学

3)Developing devices that are multi-functional 多機能商品の開発

4)Supporting open technologies オープンテクノロジーのサポート

5)Advancing the new shared experience 新しい経験を共有する先進性(ユーザーの経験を念頭に)

6)Creating new value chains 新しい「価値の連鎖」(企業や産業を超えて相互に価値を創造)

7)Going green 環境重視
ソニーの危機は「7つのイノベーション」が救う 100年後でも通用するシュンペーターのイノベーション論|めちゃくちゃわかるよ経済学 シュンペーターの冒険編|ダイヤモンド・オンライン

Wikipediaのイノベーションの項目が、もっとも分かりやすく説明されています。

イノベーション(innovation)とは、物事の「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。新しい技術の発明だけではなく、新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革である。つまり、それまでのモノ、仕組みなどに対して、全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことを指す。
イノベーション – Wikipedia

グルーポンに対して、「古いアイデアの掛け算はユーザが価値に気付きやすい」という考察を記しましたが、イノベーションとは古いアイデアの”掛け算”を行うことでもあるのです。

思い返せば、twitterやTumblrはブログの新たな形を導き出しイノベーションとしていますし、facebookはSNSをまず大学に限定することでリアルなコミュニケーションをネット上に持ち込むことでアクティブ率を上げるというのが最初のイノベーションでした。

これはIT業界に限らず言えることで、今のビジネスの根底にある考え方でしょう。考察を続ける中で、改めて「イノベーション」の言葉の意味を見直した気付きを共有させていただきました。

ビジネスクリエイター、インキュベーター、アクセラレーター、コンサルタント。エンジニアとして、PHP/HTML/CSSのマークアップ言語によるWebサイトの制作、SEOエンジニアリング、アクセス解析アナリストを経験した後、IT領域の技術/潮流をベースとしたエスタブリッシュ企業向けのコンサルタントを経て、複数のIT企業にて、Web/アプリ系、O2O系、IPライツ系の新規事業立ち上げに注力。事業開発から経営企画業務まで、事業および会社立ち上げに関する業務を幅広く経験。また、シードフェーズのベンチャー複数社の立ち上げへの参画や経営戦略・組織戦略・PR戦略へのアドバイザリー、メンター、複数のアクセラレーションプログラムのメンターも手がける。