複数の企業において新規事業立ち上げを行なってきたシリアルイントラプレナーが、そこで繰り返してきた失敗を主観的に、客観的に記す「イントラプレナー(社内起業、新規事業)の失敗学」。
今回は、ヒト・モノ・カネといったリソースの新規事業への投資について。
新規事業を立ち上げるときに、ミニマムスタートをすべきだ。
事業やプロダクトを作る現場の観点からはリーンスタートアップとすべき、という話だが、それはまた別の機会に記すとして、今回は、投資を行うマネージメントレイヤーがミニマムスタートにすべき理由を記す。
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過剰な投資をすると失敗を認めずらくなる
100円で買ったものと、10万円で買ったもの、どちらを大切にするだろうか。もちろん、10万円で買ったものだろう。
事業も同じで、100万円を投資して始めたものと、1億円を投資して始めたものでは、後者の方がより熱が入るだろう。
そのとき、マネジメント層の意識に健全な意思決定の妨げとなるような、2つの無意識の偏向が起こる。
1つは、プロダクトの良い部分だけを見ようとしてしまう「確証バイアス」が生じる。
仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。認知バイアスの一種。また、その結果として稀な事象の起こる確率を過大評価しがちであることも知られている。
確証バイアス – Wikipedia
もう1つは、1億円もの額を投資したのだから、簡単には引き下がることができない「コンコルド効果」が生じる。
超音速旅客機コンコルドの商業的失敗を由来とし、ある対象への金銭的・精神的・時間的投資をしつづけることが損失につながるとわかっているにもかかわらず、それまでの投資を惜しみ、投資をやめられない状態を指す。
コンコルド効果 – Wikipedia
これにより、本来撤退しなければいけないような事象が起きたり、KPIがはっきりでたとしても、なかなか失敗を認めることができず、撤退をしないがために、埋没費用がどんどん膨らんでいくことになる。
クリエイティビティは制約を好む
投資額を減らすことは必ずしもネガティブな側面だけではない。ポジティブな効果も生む。
投資額、つまりリソースが少ないということは、事業推進に支障をきたす。そのとき、プロジェクトメンバーは、リソースの不足を工夫で補うだろう。
その工夫こそが、イノベーションの源泉となりえる。
これまで非効率だった事業に対して、新しい効率性を組み込むことで、参入が後発になったとしても、マーケットリーダーを倒すことができるかもしれない。
その新しい工夫が特許や実用新案になれば、ますます他者との差別化要素となり、それが新しいビジネスの可能性を格段にドライブさせるだろう。
「クリエイティビティは制約を好む」
マリッサ・メイヤー
(Yahoo! CEO、元Google検索製品およびユーザーエクスペリエンス担当副社長)