複数の企業において新規事業立ち上げを行なってきたシリアルイントラプレナーが、そこで繰り返してきた失敗を主観的に、客観的に記す「イントラプレナー(社内起業、新規事業)の失敗学」。
今回は、なぜか大企業にはびこる自前主義について。
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なぜ大企業は全部自分たちでやろうとするのか
超エスタブリッシュな大企業であればあるほど、開発、生産、販売などすべての業務を自社だけで手掛けようとしがちだと思う。
また、ベンチャー企業であっても、レイターステージの企業もそうなりがちだ。
確かに、強みは多い。人材や組織、ノウハウ、資金など、様々なリソースが多様に豊富にそこに存在することこそが、大企業の強さだ。
社内起業を任された担当者は、自社の強みは使わなければ損なわけだから、SWOT分析などで徹底的に分析すべきである。
さて、そこで、弱みが全くでてこない企業など、この世にありえるだろうか。否。
少なくとも、必ずカヴァーしきれない範囲があるはずで、それが弱みになっている事業領域があるはずだ。
どんなに素晴らしい企業であれ、弱みは存在する
その弱みを見出し、しかしながら、その弱みに真正面から向かい合う事業領域を攻めようとしているとき、どうするだろうか。
なぜか自社でやろうとする企業は多い。不得意、未着手の分野すら、自前でやろうとするのは、なぜなのだろうか。
ユニクロを事例としてあげてみよう。
ユニクロはものづくり企業である。自社製品を自ら生産し、自らの店舗で販売している。垂直統合型の企業だ。日本一のファストファッションカンパニーである。
日本一であるからには、すべて自前でやっている…わけではもちろんない。
例えば、糸。糸はユニクロ自ら作っているわけではない。東レだ。
糸(天然繊維であろうと、化学繊維であろうと)は、基礎研究に近いレベルでの日進月歩の技術ノウハウの蓄積により、高い品質の製品を生み出すことができる領域だ。
そこに一朝一夕にノウハウを獲得して、しかも、ユーザに製品として届けることのできるレベルに到達するのは、ほぼ不可能だ。
しかも、莫大な投資が必要となる。
弱みを補うために必要な投資は当然ある。それを否定するつもりはない。
しかし、このユニクロのケースから学ぶべきは、弱みを補うためのオープンイノベーションを行い、自らは自らの得意領域に特化し、よりスピーディーに事業を成長させたことだ。
弱みを補うためのオープンイノベーションだ
事業環境として、新規事業を創り出すためのサイクルタイムは、どんどん短くなってきている。
足回りよく動くベンチャーの方がイノベーションを起こしやすいのは、スピードは大きな要因のひとつだ。
であれば、そこに追いつかなければならない。だからこそのオープンイノベーションである。
すべて自前でやろうとするのは無理がある。弱みすべてを自らの手で補うために必要なリソースが整っている企業など存在しえない。
強みを知り、弱みを知る。それを補うための力を内と外の両方へ求める。手段のひとつとして、真正面からオープンイノベーションを選択肢に加えるべきだ。