日経新聞の記事で、ソーシャルゲームの流行を「痛みポイント」というキーワードで、カジノ経営と比較する記事があり、興味深かったので備忘録として。
ただ、遊んでいると楽しい半面、フラストレーションがたまることも多い。
例えば、ゲーム中に友人を勧誘するメールを出させようとしたり、有料アイテムを買わせようと誘導したりする仕掛けがしばしば現れる。アイテ ム課金モデルである以上、仕方ないとはいえ、ゲームを進めるうえで必要なアイテムは常に不足している。長い時間をかければ無料で入手することもできるが、 早く先に進むには結局、有料アイテムを買うしかない。
1つの命令を出してから、次の新しい命令を出すタイミングがくるまで5分、10分、30分と一定の時間待つ必要があることも不満の理由だ。普通のゲームのようにどんどん先に進むことができず、繰り返しアクセスする手間をかけなければならない。
そのせいで仕事がはかどらず、もう何度も「やめよう」と思った。それでも止めないのは、ゲームが進行すると何か大きなことを達成したような 気分を味わえるからだ。画面をついつい眺めて新しい命令を出すタイミングを待ったり、有料アイテムを使ったりする。他のソーシャルゲームでも同様の経験を 持つユーザーは少なくないだろう。
このようにソーシャルゲームには、ユーザーが不満を感じつつも「お金」と「時間」をつい使ってしまう要素がある。お金は毎月の明細書を見ればまだチェックできるが、困るのは時間だ。
ソーシャルゲームで遊んでいると、1日の生活時間を細切れに使うことになる。これが曲者で、全体ではかなりの時間を奪われる。にもかかわらずユーザーが離脱せず増え続けているのは、あらかじめユーザーの限界を予測して、ゲーム内容に織り込んでいるからだろう。
ソーシャルゲームが大流行する「薄気味悪さ」 :日本経済新聞
顧客の行動や商品・サービスの市場価値は、コンピューターの発達により統計的に予測することが可能になってきている。「その数学が戦略を決める」(イアン・エアーズ著、文藝春秋)を読むと、こうした手法がネット書店からスーパーマーケットの割引、航空会社のマイルシステムまでさまざまな分野で使われていることがわかる。
例えばカジノ経営の米ハラーズは、「顧客を逃がさずにどこまでお金を搾り取れるかについて、実に高度な予測を使っている」という。スロットマシンなどの使用状況や勝ち負けなどをリアルタイムで監視し、その顧客の年齢や居住地の平均年収といったデータと組み合わせて分析する。これにより、顧客がお金をすっても楽しんでまた来店するのはいくらまでかを予測し、「この魔法の損失額数値を『痛みポイント』と呼んでいる」(46ページ)という。
このカジノでは、顧客が痛みポイントに近づくと、店のおごりでレストランに案内するといったこともしているそうだ。これについて著者は、「(中毒性もあり身の破滅につながりかねないギャンブルを)ハラーズ社がさらに心地よくしようとしていることには困惑を覚える。でもハラーズの痛みポイント予測のおかげで、顧客の幸せ度はおおむね上がる」(47ページ)と述べている。
ソーシャルゲームが大流行する「薄気味悪さ」 :日本経済新聞
ソーシャルゲームは、コンシューマゲームとは異なり、すべてのデータがサーバにある以上、数理解析が完全に可能となる。Zyngaは特に有名だが、最近Zyngaに買収されたウノウもこういった数理解析手法を中心に、「痛みポイント」の分析およびそれの反映を行うことで、収益を最大化させていると聞く。
ユーザの幸せ度が高く、収益が最大であることを、この記事では「薄気味悪い」と表現しているが、言葉遊びをするならば、ユーザが幸せを感じる最後の帰結が課金だと思うし、課金をするほど楽しんでいるということであれば、これを否定する論理はないのではないか。
が、ソーシャルゲームはここ以外に問題点があるとおもうが、それはまた後日。