複数の企業において新規事業立ち上げを行なってきたシリアルイントラプレナーが、そこで繰り返してきた失敗を主観的に、客観的に記す「イントラプレナー(社内起業、新規事業)の失敗学」。
今回は、社内起業を進めるための「時間」に対する意識について。
Contents
稟議制度という日本固有の悪しき伝統
日本の公私の組織に共通する伝統的な決定方式。日常的な事務的事項の決定の原案は階統制の比較的低い段階で起草され (稟議) ,全関係者の間を回覧され,彼らがその承認を与えたのち決定権者に提出される。
稟議制度(りんぎせいど)とは – コトバンク
ボク自身が外資系企業で働いたことがないため、主観的な比較はできないが、「稟議」という制度は日本固有のものだという。
「稟議」は制度として、ボトムアップが前提になっている。トップの意向、判断、指示であっても、ヒエラルキーの下層にいる人間が、稟議書を提出する。
合議的であり、全体のコンセンサスを図れ、スタッフが経営に参画できる、という素晴らしい側面を持ちつつ、どの起業でも、その側面はすべて蔑ろにされ、ただただスピードアップを阻む弊害になっていることだろう。
社長に「今すぐやれ!」と指示を出されたにもかかわらず、予算執行するのであれば稟議の提出が必要で、相見積もりをとり、稟議書を書き、決裁権者をまわって、承認が下りた頃には1ヶ月…なんてこともザラにある。
(利点としては、責任の所在が曖昧、ないし、ヒエラルキーの下層に責任が押し付けられる、といったところか)
海外企業はそもそもスピードが速い
日本企業はヒエラルキー型の組織でありながら、中途半端なボトムアップを取り入れているために、スピードが遅くなっているのだ。
海外企業も総じて同様にヒエラルキー型の組織である。しかしながら、明確な業務分掌の中で裁量権を持つ責任者の判断で実行し、レポートをする、というのが当たり前なんだそうな。
つまりは、会議体で意思決定したり、トップの判断で指示がおりてきたら、それを受けて、自分の与えられた裁量で判断をして業務を進めることができる。
トップダウンで一気にスピーディーに物事を進めることができるわけだ。
ベンチャーの一番の強みは意思決定の速さ
ベンチャーはこれをさらに加速させる。
なぜならば、稟議制度もなければ、そもそもヒエラルキー型の組織もない。創業者を頂点とした強烈なトップダウン型の組織である。(そして、その山は基本的に小さい)
創業社長=経営のトップ=プロダクトのトップであるから、ちょっとした会話のなかで、プロダクトの方向性を決めることも、キャッシュアウトの判断も、採用も、ピボットも、解雇も、なにからなにまで決めることできる。
また、プロダクトの細かなPivotについては、ときにはトップ不在でも、ちょっとした会話のなかで決めていることだろう。決定のために、議論をするよりは、まずは作り動かし、検証してから判断する、というサイクルが自然に身についている。
そのため、ベンチャー企業は常にトップスピードで走り続けている。
Webサイトの文言1つ修正するのに、わざわざ確認・許可をとり、それを証左として残しつつ(自己保身しつつ)、修正を加えるような大企業とは雲泥の差だ。
社内起業はトップスピードで走れ
社内起業は、こういった海外企業やベンチャー企業と戦うのだ、ということをきちんと意識しなければならない。
ということは、常にトップスピードで走り続けている人たちよりも、速いスピードで走ることもひとつ大切なことだ。
亀のようにトロトロと稟議をあげていても、童話と違ってうさぎは待ってくれない。どんどんと差を広げていくことだろう。
さあ、まずは稟議制度を捨てることからはじめてみよう。