YOMIURI ONLINEで磯崎哲也氏が「「頭のいい人」が陥る「罠」」にて、ベンチャー企業の成功ストーリー、本質についてコラムを書いたので雑感。
戦後、政府が主導して特定の産業を振興させる「産業政策」という手法がとられてきました。今や多くの人が「技術革新が早くニーズが多様化している現代においては、もはやそうした産業政策的な手法は機能しない」と主張されていますが、同じ方々が同時に「日本ではベンチャー企業に投資してもうかりそうな領域が見当たらないんだよなあ」などとおっしゃったりするわけです。
でも、「産業」も「領域」も、「複数の企業をひとくくりにまとめて考えている」という点では実は全く同じなんですよね。ベンチャー企業の成功というのは、「産業」「業界」「領域」といった特定のくくり全体の成長性で決まるわけではないのです。なぜなら、ベンチャー企業は、「今までと異なったやり方」でイノベーションを起こす企業だから。
ベンチャー企業の成功ストーリーは、一つ一つ全く「個別」なものです。「産業」や「領域」の一般論では語れないわけです。成功するベンチャー企業は、「今までと違ったやり方」をとらないといけませんが、「今までと違うやり方」が成功するかどうかは、人間がちょっと考えただけではわからない。最終的には、「実際にやってみて」はじめてわかるわけです。このため私は、頭で考えてケチをつけるだけでなく、「実際にやってみる」のが、ベンチャー企業の本質だと思うのです。
ですから、「その『領域』じゃ、あまり成功しないと思うよ」というアドバイスは、「今までの企業と同じやり方では成功は望めないよ」という意味に受け取るべきではあっても、がっかりする必要は必ずしもないかもしれません。
そして、そうした「頭がいい」(が実際には動かなかったり、他人の足をひっぱったりするだけの)人に最も説得力があるのが「成功例」です。日本は「頭がいい人」が多いですから、政治や経済の領域にいるそういう影響力のある方々をベンチャービジネスのファンにするためには、「成功例」をたくさん増やすことこそが重要なのです。
「頭のいい人」が陥る「罠」 : 磯崎哲也の起業案内 : 起業 : ジョブサーチ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
磯崎氏は、GDPと業界の市場規模、利益率と株価収益率(PER)や時価総額から、新規事業が稼ぎ出す売上や利益をマクロ的大局的な視点で見ることの稚拙さを指摘している。
日本のベンチャー企業のP/Lの引き方といったら、Excelを横にびーっと引っ張るだけというケースも多い。そんな楽観的な指標だけで、今後の成長性を見つけ出すのが難しいのは当然である。
本文でもっとも共感したのは、「領域」で一括りにして成功するかしないかの判断をするのは間違っているという点だ。僕は財務の専門家ではありませんので、言葉の定義からのアプローチとしてこの点を考察してみる。
ベンチャービジネスの魅力は、なんといっても「イノベーション」。世界に革命を起こすことにつきると思います。それは、既存の「領域」にある枠組みを壊し再度組み立てることによって起こり得るものであり、すべて既存の領域のなかにあるものと、ボクは考えている。
世界に革命を起こし続けているApple、Google、facebook、twitter…。彼らのビジネスをしっかりと観察すれば、それが決して目新しいものではなく、既存に存在している「領域」のビジネスの組み換え、つまり、リプレイスであったり、ディスラプトであることがみてとれる。
磯崎氏は結びに出資者に対する向き合い方としてのベンチャーへのアドバイスとして締めくくっている。ベンチャーとしての考え方として、私はこの「領域」でイノベーションの可否を考えることは本質からズレており、その「領域」の中でイノベーションを起こすという志向の仕方をしていきたいと考えている。