アントレプレナーに対して、イントラプレナーという言葉がある。大企業における新規事業の立案、いわば、企業内起業、社内起業のことだ。
ボクは、アーキタイプ時代は新規事業立案のコンサルタントとして、複数のエスタブリッシュカンパニーの新規事業立案のサポートをさせていただいた。その後、コロプラ、グリー、そして現職のザッパラスと、まさに現場で企業内における新規事業の立ち上げを立て続けにやってきた。いわば、シリアルイントラプレナーである。
そして、そのなかで、中ヒットはあれど、大ヒットは生み出せていない。それどころか、ほぼほぼ事業として「失敗」に分類されてしまうような結果ばかりだ。
その失敗にもめげず、イントラプレナーとして新規事業を立ち上げようとしている今、これまでの失敗を主観的にも客観的にも、しっかり評価すべきタイミングにあるとおもう。
世の中には成功事例ばかりが目立っているが、世間的には埋没しているような失敗事例こそ、学びは多い、と個人的にはおもっているので、この「イントラプレナーの失敗学」を知見としてまとめながら、様々な人と議論をするボク自身のきっかけにしたい。
乱雑にポストを重ねていきながら、知見としてうまくまとまるといいな、とおもいつつ、遅筆なんでどこまでいけるかはわからない。という保険。
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なぜ社内起業は必要なのか
社内起業を取り入れよう、新規事業にチャレンジしようとしている会社は、当然、すでに売上と利益を出している「既存事業」がある。
既存事業が成長フェーズにあるのであれば、それをさらに伸ばすような、現行の製品や技術を改善するような「持続的イノベーション」は、通常の事業運営のなかで取り組むべき課題だ。そして、それをまさに実践しているとおもう。
しかし、踊り場に差し掛かっているフェーズや、シュリンクしつつあるフェーズでは、持続的イノベーションだけでは、その後の長期的な会社の成長につながらない。
そこで、企業の新陳代謝を促すために、自らの既存事業を脅かすような「破壊的イノベーション」や「新規事業」が必要となる。
社内起業はわかってても推進できないのはなぜか
大企業であればあるほど、やはりこの「自らの既存事業を脅かす」ということに、二の足を踏む傾向が強くなる。
ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」によると、優良な企業が合理的に判断した結果、破壊的イノベーションの前に参入が遅れる理由を5つあげている。
- 企業は顧客と投資家に資源を依存している
- 既存顧客や短期的利益を求める株主の意向が優先される
- 小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
- イノベーションの初期では、市場規模が小さく、大企業にとっては参入の価値がないように見える
- 存在しない市場は分析できない
- イノベーションの初期では、不確実性も高く、現存する市場と比較すると、参入の価値がないように見える
- 組織の能力は無能力の決定的要因になる
- 既存事業を営むための能力が高まることで、異なる事業が行えなくなる
- 技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない
- 既存技術を高めることと、それに需要があることは関係がない
とはいえ、いま目の前にある既存事業も、いつまでも成長し続けるわけではない。必ずいつかは環境の変化が訪れ、いつかはシュリンクしていくものだ。そのとき、それとともに会社を終わらせたい経営者は存在しないだろう。株主はよりそうは思わない。
だからこそ、それまでの既存事業で抱えていた人員を含めたリソースを存続させるために、次の成長のために、すべてのステークホルダーのために、新しい事業が必要となる。
このあたりの「新規事業の必要性」について異論はないとおもう。次回以降、新規事業を立案するにあたって、僕が繰り返してきた「失敗」を、自責、他責含め、論じてみたいとおもう。