人材採用とは難しいもので、A4数枚のペーパーと1時間程度の面接を数回重ねるだけで、その人の人柄や人間性、成長性、スキルの成熟度を判断して、合否を決断しなければなりません。
当然、読み間違えは少なくない確率で、候補者側からも会社側からも互いに起こるわけで、入社後にミスマッチだったと気づいたときにはもう遅い、というケースも起こりがちです。
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入社前にしっかりと、互いのマッチ度合いを探る
どの会社ももちろんですが、スタートアップであればあるほど採用での失敗は大きな損失になりかねません。媒体費やエージェントフィーなどの採用費も入社後に支払う給与もバカになりません。
だからこそ事前予防策として、入社前にしっかり時間を使うべきです。近年優秀な方をなるべく他社に逃さないように、エージェントからも早く結論を出すように急かされることが多くなってきていますが、それに左右されることなくじっくりと時間をかけてマッチングを検討すべきではないかと思うのです。
早くオファーが出たからといって他社を選択するような人は、そもそも御社にとって必要な人材ではないでしょう。御社の理念やビジョン、行動規範などに理解し、共感し、さらにはそれをしっかり時間をかけてすりあわせを行った人材こそ、採用すべき人財なのです。
アタリマエのことにアタリマエに時間を使わなければ、ミスマッチは防げません。
経営判断としての改善命令・離職勧告は後回しにしない
仮にミスマッチが起きた場合は、なるべくスピーディに判断をすべきでしょう。放置をせずに、アクションを起こす判断を、です。何もせずにどうにかなる、誰かがどうにかしてくれることはないのですから。
そのアクションとはもちろんいきなり離職勧告をせよ、といっているわけではありません。また、そうすべきではありません。仮にどんなにマッチしない人材であったとしても、何らかのチャンスは何度か(最低3回は)与えるべきです。
これは当人のためはもちろん、周りの他のメンバーに対するメッセージとしての意味合いも含めて、すべきなのです。
即座に離職勧告をすれば、メンバーには失敗に寛容ではない、チャンスを一切与えない経営者と見えてしまいます。するとメンバーたちも、なるべく失敗しないように、なるべくミスを犯さないようにと、萎縮をした仕事をするようになります。そして、些細なミスであれば報告をしないようになっていきます。自分が同じような境遇にならないために。
逆にはっきりとチャンスを与えることを公言したうえで、当人にチャレンジさせれば、それがメッセージとなります。どんな状況、どんな環境であれ、必ずチャンスを与える経営者なのだ、と。そして仮にそのチャンスにことごとく失敗し、離職していったとしても、それがメンバーにネガティブにうつることはありません。彼は自らチャンスを手にできずに辞めていったのだ、とはっきりわかるからです。
「採用」というのは、その候補者・社員にとっては「入社」ないし「転職」という、人生において大きな判断をしていることと同義です。その判断を、最終結論は候補者自身が出したとはいえ、会社側としても促しているわけです。そこに対して軽んじた判断を繰り返す経営者に、どうしてメンバーは自身の人生を預けようと思うでしょうか。
経営判断はなるべく慎重にしっかりと、しかしながらスピーディに結論を出すべきです。
他人の人生を預かる身としての採用責任
また、いきなり離職勧告をすべきではない理由はもう1つあります。それは「採用責任」です。面接官に対して問う「採用責任」、候補者に対して果たすべき会社の「採用責任」がそこにはあります。
面接官が「欲しい」といったから、最終面接まで進み、合格が出ているのです。現場で必要だと考えたからこそ、合格になったのでしょう。にも関わらず、即座に「辞めさせたい」といってきたとしたら、「採用」という業務を、またそのプロセスを軽んじているに他なりません。
そこで反省をせず、もしそういった事象を繰り返すのであれば、それはもうむしろマネージメントにはふさわしくない人財である可能性が高いです。人財を採用し、育成する、というマネージメントの業務を放棄しているのですから。
それをしっかり意識させるためにも「採用責任」をしっかりと問い、マネージメント教育をすべきです。それも含めて、経営者の責任であるわけです。
そこまで考えて「採用」をするべきではないでしょうか。