投資家と起業家との関係性に対する超個人的な考察

自身は起業家でもなんでもなく、ただのシリアルイントラプレナーなのだが、最近、投資家の方と話す機会が多く、また、スタートアップ側から投資家の色々を見聞きする機会も増えてきた。

今日の時点で、自分なりに投資家と起業家との関係性について、考えがまとまりつつあるので、ひとまずまとめてみようとおもう。

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投資家は数多いるが、「投資したお金が働くこと」というゴールは同じだ

起業家が数多いるように、「投資家」といっても、一口に括れるものではない。エンジェル投資家、VC、CVC、事業会社の投資部門。インキュベーターやアクセラレーターと名乗る人もいる。それぞれ、思惑も様々だ。

唯一、一致していることといえば、投資家は、起業家が食べるためのラーメン代を出資したわけではないし、銀行にお金を預けておいてほしいわけでもない。そのお金が働くことを望んでおり、最終的には、大きなリターンとなって戻ってくることを求めていることだ。

起業家は投資家の特性を理解した上で、活用する必要がある

起業家は、どんな投資家であっても、そして、彼らがどんな甘言を言っていたとしても、大前提の投資家の特性は理解しておいた方がいい。彼らの発言の裏側には、いち早く大きなリターンとなるためにIPOやバイアウトをさせようと思っている、ということを。投資家から資金を入れるということは、必ずしもメリットだけではないのだ。それが足かせにもなることもある。

もちろん、メリットは大きい。資金調達以外でいえば、投資活動を通じて得られたノウハウの横展開がもっとも大きなメリットである。投資家は、起業家と比べて、投資活動を通して事業の実例の”数”を多く見ている。そこから得られた「落とし穴に落ちない方法」は、非常に有益である。

起業家は、もちろん投資家を無視するべきではない。有益な知見・ノウハウ・情報・洞察を、彼らは持っているからだ。しかしながら、事業運営をリードさせるべきではない。彼らのゴールと、起業家のWHYは同じように見えて違うからだ。

シードフェーズにはなるべく投資家の数を増やすべきではない

個人的には、シードフェーズに投資家を複数いれることは、とても大きな足かせをつけることとイコールだと考えている。なぜならば、投資家それぞれ思惑が違うからだ。ゴールは同じだとしても、そこに至るまでのスケジュールや求める規模が違うために、ぶつかりあうことがある。それぞれの思惑に引っ張られてしまっては、事業が良からぬ方向へ進む可能性が出てきてしまう。

本来的には、一番のリスクをとって事業を進めているのは起業家であるから、起業家自身が事業をリードすべきである。しかしながら、株主として投資家が入るということは、当然、そのリードする権利を売り渡す、ということになる。そのため、100%起業家がリードできるわけではなく、利害を調整せざるを得ない。

ベストは、最後のアクセルを踏むための資金調達まで、自己資金で事業運営することである

最初はなるべく自己資金(もしくは借入)で事業運営して、仮説検証をしっかりやる。そして、KPIがすべてベストな状態に整い、最後の最後にアクセルを踏み込む(広告宣伝費だったり、人材採用だったり)ために、大型調達をする。しかもできることなら信頼できるキャピタリストのいる1社からのみ。というのが、ベストであると思う。足かせをなるべく小さく少なくするために。

もしくは、最初のシードマネーを調達するにしても、こうした考え方に寄り添って、共に歩んでくれるようなエンジェル投資家からのみに絞るべきである。足かせとならない投資家を選ぶべきで、無判別に調達すべきではない。「金」に色はなくとも、それを使う人間は千差万別だからだ。

ビジネスクリエイター、インキュベーター、アクセラレーター、コンサルタント。エンジニアとして、PHP/HTML/CSSのマークアップ言語によるWebサイトの制作、SEOエンジニアリング、アクセス解析アナリストを経験した後、IT領域の技術/潮流をベースとしたエスタブリッシュ企業向けのコンサルタントを経て、複数のIT企業にて、Web/アプリ系、O2O系、IPライツ系の新規事業立ち上げに注力。事業開発から経営企画業務まで、事業および会社立ち上げに関する業務を幅広く経験。また、シードフェーズのベンチャー複数社の立ち上げへの参画や経営戦略・組織戦略・PR戦略へのアドバイザリー、メンター、複数のアクセラレーションプログラムのメンターも手がける。