複数の企業において新規事業立ち上げを行なってきたシリアルイントラプレナーが、そこで繰り返してきた失敗を主観的に、客観的に記す「イントラプレナー(社内起業、新規事業)の失敗学」。
今回は、大企業内でのリーンスタートアップの実現性について。
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新規事業は既存事業と同規模の収益をあげるためにはじめるのが前提だ
企業とは、営利目的のために一定の経済活動を行うために存在するものである。
つまり、収益をあげることが大前提なわけだ。
新規事業も等しく、収益をあげることが大前提として取り組まれる。
このとき、既存事業が大きければ大きいほど、新規事業に対して求められる収益の規模は必然的に大きくなる。
大企業であればあるほど、小さな事業を始める意味などなく、将来的には既存事業と同レベルの規模に達する可能性のある事業に取り組む必要がある。
新規事業には短期的に成果をあげることが期待される
リーンスタートアップは、Product/Market Fitの仮説検証を繰り返しながらの、ピボットを前提としているため、ピボットを繰り返している間は当然のごとく大きな収益を上げることは難しい。
そこでのKPIは、売上・利益ではなく、より曖昧な仮説検証というものである。
また、ともすれば、そのピボットの成果が出るまで、10年近くを要することもある。
しかし、既存事業のマネージメントレイヤーからすれば、事業の評価は、共通の指標としてより「営利目的」としてのKPIである売上・利益をみることになる。小さな事業の曖昧なKPIに何ら意味はない。
つまり、仮説検証を繰り返している、確実に成功へと近づいている、という報告ではなく、売上・利益が積み上がっているという報告が期待されており、それによって事業継続の判断が下されるのだ。
リーンスタートアップの実践には細く長くチャレンジできる環境が望ましい
スタートアップは、1つの事業に取り組んでおり、また、バーンレートも低いのだから、その生命の源である資金が続く限り、チャレンジし続け、ピボットし続けることができる。
しかしながら、大企業であればあるほど、比較対象である事業は存在するし、それなりにバーンレートも高い。リソースを集中投下できるわけではないため、事業として成果が出るところにリソースを振り分けざるを得ない。
共通指標としての売上・利益で成果が出ていない事業に対して、投資し続ける判断をするのは難しいのだ。
もちろん、確実な成功を狙うために大きな資本投下をして一気に攻め込むには、大企業での新規事業の方が向いている。
しかしながら、リーンスタートアップは、本質的な考え方を大企業における新規事業に取り入れることはできたとしても、その前提となる事業に対する意識が異なるために実践的に取り組むのは難しい。