ベンチャー企業だけでなく、巨大な企業であろうと中小企業であろうと既存事業を営んでいる企業体も、成長のためにはイノベーションは必要不可欠である。
持続的イノベーションと呼ばれる既存製品のモデルチェンジや新機能追加、マーケットシフトであったり、破壊的イノベーションと呼ばれる今まで誰も見たこともないような画期的な製品や新規事業などだ。
そこに異を唱える方はいないだろうが、特に既存事業を営んでいる企業体の経営層やマネージメントレイヤーには、基本的な考え方において勘違いをしていることが多いように思う。
まるで、自分たちは特別な魔法を持っていて、簡単にイノベーションを起こせるかのように思っている方もいたり、イノベーションは起業家にだけ起こせる特権かのように思っている方もいる。
イノベーションを起こせる可能性は、両者において優劣はない。そして、スタートアップだろうが、巨大な企業だろうが、イノベーションを起こすために必要なベースの考え方は、一緒だ。
イノベーションに必要となる基本的な考え方は、以下の3つに集約される。
Contents
「小さな一歩」
どんなに革新的なプロダクトや事業であっても、世界を変えたあの大企業であっても、最初はすごく小さな一歩から踏み出している。
そして、その一歩は踏み出すことが大切だ。踏み出す機会は誰にでも平等にある。しかしながら、踏み出したもののみが成功の境地に達することができる。
よくありがちなのは、大企業であろうと、起業家であろうと、大きな絵を書き、その要件定義をすることに時間をかけてしまうこと。
一番最初に「WHY」を定義することは大切だ。どんなユーザにどういう世界を提示したいのか。
しかしながら、その世界を実現するための手法(HOW)や製品(WHAT)は、1つではない。そこに答えはない。
それを「要件定義」することに多くの時間を費やしてはならない。机上の空論に意味はない。
まずは、その「WHY」を実現するためのHOWやWHATに対しての仮説を立案し、それを確認するために必要最小限のプロダクトをつくり、世に出してみよう。
そこから、すべてははじまる。考えているだけではなにもはじまらない。
「たゆまぬ改善」
小さな一歩を踏み出したらどうするか。あとは、ただひたすら改善を繰り返すのみだ。
一足飛びに世界を変える魔法のような手段はない。銀の弾丸は存在しないのだ。
それは、スタートアップだろうが、テクノロジーベンチャーだろうが、大企業だろうが変わりはない。ただひたすら、鉛の弾丸を撃ち続ける以外にイノベーションを実現する方法はないのだ。
「WHY」を実現するためのHOW、WHATを常に確認し続ける。仮説を立案して、検証をする。それを繰り返し続ける。ふと気づいたときには、実現したい世界が目の前にあらわれているはずだ。
ただし、忘れてはならないのは「WHY」だ。どんなユーザにどういう世界を提示したいのか。それを軸にピボットしなければならない。そこからズレるということは、いままで積み重ねた「一歩」を裏切ることになる。それはユーザに対しても、自らのWHYに対しても。
もしWHYからズレてしまうことが正解なのであれば、それはWHYそのものを見直すタイミングなのかもしれない。
「我慢」
たゆまぬ改善のために必要なのは、我慢、だ。
大企業であればあるほど、目の前の成果を追い求めてしまうだろう。少しも成果が出ていない事業を継続するのは難しいかもしれない。
しかし、何度もいうが、銀の弾丸は存在しない。一足飛びに成果などあがらない。成果があがるまで、鉛の弾丸を打ち続けるしかないのだ。
大企業だからといって、無駄に大きなコストを払うのではなく、そのチャレンジを継続して行えるように、埋没費用をなるべく小さくしよう。
そして、経営者は、大きな埋没費用が既存事業に悪影響を及ぼさないかぎり、なるべく我慢して、長い目でその進捗を見守ろう。
ベンチャー企業にとっての我慢は、生き残ることだ。ただただ生き残り続ければ、いつかイノベーションを起こすことができる。死んでしまっては元も子もない。
もちろんそれは出資や借入などによる資金繰りかもしれないし、目の前の売上をあげることかもしれない。どの手段をとるかは、事業ドメインによって異なるだろう。
ただ唯一、死なないことだけは忘れてはならない。