憲法や法律があり、そして業界慣習やルール。成熟事業の位置する成熟マーケットには必ず何らかの縛りがあるものです。
それをもまた大企業病と呼ぶ人もいますが、マーケットの開拓者たちが長い年月の折衝を社会と、顧客と、企業同士とで重ねた上にできたもので、そのルール自体が悪いものとまではいえない側面は大いにあります。
それゆえ、グレーゾーンを攻めるのがスタートアップの醍醐味であったとしても、ルールを破れば潰されて当たり前です。
スタートアップや新規事業で業界をディスラプトするような破壊的イノベーションを目指すのであれば、なおのこと「破壊される側を考慮」することは大切で、そのためにルールメイキングしたり、ルールを守った上でルールを逸脱することが求められます。
社会の公器としての責任は、何も大企業にだけ求められるわけではありません。破壊的イノベーションを起こすスタートアップにも当然のように求められます。社会や伝統を破壊することへの反発は、イノベーションを阻害する要因になりますが、折衝する責任を回避する言い訳にならないのです。
日本のスタートアップ・エコシステムは未だ成熟していません。メディアもスタートアップを応援はすれども正しくすべき批判をしません。VCもまた然りです。マスメディアはよほど大きな問題でなければ着目はしません。
その中で、法律を破ることがイノベーションとでもいうようなスタートアップが後を絶たないのです。
違反が目立つのが化粧品や食品。薬機法(旧薬事法)や景品表示法の違反は後を経ちません。軽微な違反であれば、大した取り締まりも受けないからです。顧客を騙し、社会を騙し、売り上げをあげたところで、綺麗に化粧し直す。それがスタートアップだ、と胸をはっていえるのでしょうか。
社会の公器としてスタートアップも責任はしっかり果たすべきだし、逆にいえばルールがおかしいと思うのなら、ルールを破るのではなく、ルールの中で戦いながら、ルールを変えるロビイングをしっかりするべきです。