メンターが起業家の事業内容を批判することが無意味な3つの理由

年50社ほど、起業家/起業準備中/起業予備軍の方たちのメンタリングをさせていただいています。

それを通じて意識していることの中で、もっとも大切にしていることがあります。

それは「事業内容を絶対に批判しない」ことです。

ざっくりまとめると…

  • 1. 批判した事業がそのままに大きくなることはざらにある
  • 2. 人は誰しも自分が経験したことしか知らない
  • 3. 起業家以上にその事業を考え抜いている人はいない

Contents

批判することの無意味さ

かくいうボクもメンタリングを通じて、事業内容を批判してしまっていた時期はありました。

「そんなもの絶対に売れない」と。

そういう発言を浴びせてしまった方。本当にごめんなさい。

その後様々な経験を通じて、批判することに意味がないことに気付かされました。

1. 批判した事業がそのままに大きくなることはざらにある

「そんなもの絶対に売れない」といってから数年経って、すごく伸びた事業があります。

その批判をした当時は本当にそう思っていました。そして、今でも伸びた理由はよくわからないですし、このあとも成長するかどうかには懐疑的であったりします。

しかし、批判をした事業が伸びたことは素直に認めざるを得ません。

結局のところ、批判をした当時ではもしかしたらその批判は正しかったかもしれませんが、それ以降に変化は必ず起こるわけです。

それが起業家の成長かもしれませんし、組織の強化かもしれません。はたまたPEST的な外部環境の変化が追い風になることもあるでしょう。

だから、今この瞬間の事業の仕上がりや戦略に対して「批判」をすることなど到底無意味な行為なのです。

2. 人は誰しも自分が経験したことしか知らない

1.の続きになりますが、その事業が成長した今思い返すと、その批判をした理由は、「ボクはいらない」「ボクが考えうる範囲の人はいらない」というだけだったのです。

つまりボクの考えの及ばない範囲で可能性があることを全く考慮しない発言だったのです。

結局人は誰しもですが、経験したことしか知りません。経験していないことは知らないのです。

そして、他人がやろうとしている事業について、知っていることなどありません。

それがどんなに今までやってきた事業や市場と類似する割合が多くとも、今その起業家がやろうとしている事業はどんなものであっても「世界初」だからです。

知っていることだけを基準に「批判」をすることなど到底無意味な行為なのです。

3. 起業家以上にその事業を考え抜いている人はいない

そして、最も重要なのがその起業家以上にその事業を考え抜いている人はいないわけです。

メンターはその起業家の事業を短ければ1分程度のピッチを聞いただけで、意見を述べています。

しかし起業家は、メンターとは違い24時間365日その事業のことを考え、行動し、また考え、考え抜いているわけです。

メンターが考えていることなど、すでに考えていることが往々にしてありますし、その批判など何百回もすでにシミュレーションをしていることなわけです。

つまりそんな批判があることなどわかった上で、それでも解決したい課題や幸せにしたい誰かがいて、事業に邁進しているわけです。

メンターが「批判」をすることなど到底無意味な行為なのです。

批判をするな。より良くなる方法を共に考えよ

建設的な批評によって、抽象化した議論を行う

ボクはメンターの矜持として「批判」しないが「建設的な批評」をし、抽象化した議論を行う上で、それよりも「より良くなるソリューション」がないかを共に考えることを心がけています。

なるべく具体的な「施策」「アクションプラン」には踏み込まないわけです。

結局のところ、現場実務は現場で動いている人が一番良くわかっているわけで、それを外部からしかみていない、情報量が少ないメンターが突っ込んだところで対して得られるものはありません。

現場実務は起業家とそのチームがやりきるべき領域なのです。

メンターがすべきはその実務をやるかやらないかの判断基準づくりであるべきであって、それが「抽象化した議論」なわけです。

抽象化によって、判断基準を形成し、転用する

物事を抽象化して把握し、そこに信念を築くことができれば、自ずと判断基準が形成され、それによって無駄な行動を省き正しい努力ができるはずです。

その「抽象化した議論」のために、自身の経験したことを「抽象化したフレーム」として話すことには意味があります

自身の経験した「アクション」そのものには意味がないのです。そのアクションによって成果がでたのは、アクション自体だけがよかったわけではなく、会社の組織や文化、はたまた外部環境という複合的な要因によってなされたわけで、そのアクションをそのまま実行しても同じような成果が出るとは限らないからです。

逆に、それを「抽象化」することで、その複合的な要因を省き、クリティカルパスを見つけることができます。そのうえで「転用」を考えれば、起業家にとって良いアクションがみつかるのです。

メンターが関わるべきはそれを導くためのファシリテーションやコーチング、ケーススタディであって、たんなる批判や現場実務ではないのです。

ビジネスクリエイター、インキュベーター、アクセラレーター、コンサルタント。エンジニアとして、PHP/HTML/CSSのマークアップ言語によるWebサイトの制作、SEOエンジニアリング、アクセス解析アナリストを経験した後、IT領域の技術/潮流をベースとしたエスタブリッシュ企業向けのコンサルタントを経て、複数のIT企業にて、Web/アプリ系、O2O系、IPライツ系の新規事業立ち上げに注力。事業開発から経営企画業務まで、事業および会社立ち上げに関する業務を幅広く経験。また、シードフェーズのベンチャー複数社の立ち上げへの参画や経営戦略・組織戦略・PR戦略へのアドバイザリー、メンター、複数のアクセラレーションプログラムのメンターも手がける。