サラリーマンとして、社畜として、歯車として。どこかの誰かが創業し、どこかの誰かが運営する会社で働くのだとしたら、誰しも成長企業ないし成長する可能性の高い企業で働きたいと願うものです。そして、企業を成長させることのできる経営者の下で働きたいとも、同時に思うものであります。
そこで、これまで様々なベンチャー企業を転々とし、様々なタイプの経営者の下で働き、アライアンス先として様々な経営者と交渉し、メンターとして様々な経営者をサポートしてきた経験をもとに、没落企業ないし没落する可能性の高い企業の経営者にみられる共通点をまとめてみました。
サラリーマンは転職活動の参考に、スタートアップの経営者は自戒のためのチェック項目としてご活用くださいませ。
- ①グランドデザインを描かない、描けない
- ②成功体験に縛られる
- ③市場の感覚とのズレに気付かない
- ④自責の観念はゼロ。基本的にすべて他責
- ⑤権限移譲をせず、強烈なトップダウン
- ⑥「社員のために」はクチだけ
- ⑦法令遵守する気はない
- ⑧そもそも、もうやる気がない
権限移譲をせず、強烈にトップダウン
企業のサスティナブルな成長のためには、やはり権限委譲はすべきです。たったひとりの経営者が一度の成功を手にした後に、未来永劫企業を成功させ続けられることがやはり難しいからです。
それは、成功体験が足かせになったり、市場の感覚とのズレがおきたり、と、様々な理由がありますが、むしろネガティブな意味合いよりもポジティブに「チームでレバレッジをかけたほうが、創造できる価値を大きくできる」からというのが一番大きな理由だと思います。
しかし、没落企業の経営者は、ご多分に漏れず「権限委譲」を一切しません。そして、強烈なトップダウンで組織を動かそうとします。
メンバーの立てた企画をそのまま通すことはほぼありません。基本的にファーストコンタクトは「NG」から。NG理由が基本的に些末な指摘や経営者が確認する必要のない細かな内容。そもそも指摘理由が感覚であったり、ロジックが破綻していたり。それに振り回された議論の時間を多く消費した結果、最終結論は最初の提案通りに着地。あげく「この議論に意味がある」と。確かに議論に意味があることに否定はしませんが、それは意味のある議論だった場合のみ。こういう経営者との議論は無意味に時間を消費し、メンバーの精神をすり減らすだけです。
ヒエラルキーを神聖視し、上下関係を飛び越えることは絶対に許しません。ですが、「フラットな組織」「風通しの良い組織」と耳障りの良いことはクチにします。それを信じて、直接意見具申をしたり、過ちを真正面から指摘をすると、それはまるでクーデターを起こそうとしている裏切り者に対するかのように、烈火の如く怒り狂い、斬首刑に処すほど。にも関わらず、マネージャーたちには「お前らはスタッフの気持ちをちゃんと理解してない」と。そもそも理解する気などさらさらないのは当人なのに。
おろか1円単位の決済まですべて目を通す。スタッフがやる行動のイチからヒャクまでを把握したいのか、決裁権限はほとんど移譲しません。というルールになっているものの、件数が多すぎるため結局ほぼほぼ詳細を見ずに「承認」。スピード違反のようにたまたま目についてしまったら運の尽き。ものすごく些細な点を指摘されて「却下」。タイトルをほんのちょっと書き換えて出し直しすさえすれば承認されます。結局、これでなんの効果が出るかといったら、承認タイミングの遅れによる事業進捗のスピード悪化。もちろん、自分の経費に関しては完全にザル。そこにルールなどまるでないかのよう。
などなど。
こういった経営者にあるのは「選民意識」です。一度企業を大きくした自分は、他のスタッフよりも人間的に優れている。自分より劣っている人間を正しい方向に導いてやらねば、と。
「権限委譲できるほどメンバーが育ってない」という言葉が口癖のように出ますが、そもそも権限委譲とは、メンバーをマネージメントレイヤーへ育成するためにステップ・バイ・ステップで行っていくものであって、育つことを待つものではありません。
また、例えばその権限を細分化したり、業務プロセスをルール化、マニュアル化することで、メンバーへ権限委譲ができるようにしていくことも、マネージメントレイヤーの業務のうちです。
人材育成の基礎中の基礎を知らずに、たった一度の運で起こった成功だけを理由に「選民意識」をなぜ持ててしまうのでしょうか。それを持ってしまった時点で成長は確実に止まってしまうのに。