スタートアップは、UXの専門家を雇ってはいけない

UXをプロダクトに対して実現するための最良の策は「専門家を雇う」ことではありません。むしろ「専門家」は雇う必要はないのです。

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UXの組織における位置づけとは

「UX」ないし「UX Designer」という役割(ロール)の組織的な位置づけは、「UXを設計できる人」というだけでは成立しません。

UXというのは、ただ単に素晴らしいものが設計できれば、素晴らしいプロダクトができるわけではありません。プロダクトを創るのは、UX Designerではなく、エンジニアやUIデザイナが必要で、またユーザに使ってもらうためには、マーケティングやセールス、カスタマーサービスが必要なのです。つまり、UXというのは、UX Designerだけで創りあげられることは絶対に有り得ないのです。

ということは、「UX Designer」という役割は、ただUXを設計することだけが役割ではなく、すべてのチームメンバーがUXを意識できる状態にするということなのです。

UXの専門家を雇うということは

そういう意味で、「UXの専門家を雇う」というのは、「UXが設計できる人を雇う」のではなく、「UXの啓蒙ができる人を雇う」という意味になります。

逆説的に言えば、それができない人はUXの専門家を名乗る資格はない、ということです。ただ知識があるだけの人や研究者など、事業の現場には不要なのです。

しかしながら、現在の日本の人材市場において、UXの啓蒙ができる人材はあまりにも少ない。本質的にあるべき「UX」の役割が担える人はなどほとんど雇えないか、雇えたとしても相当な高給になります。

スタートアップでUXを実践するためには

つまり、スタートアップにおいて、UXの専門家の採用を求めること自体間違っているのです。しかしながら、スタートアップには、そもそもUXの専門家など不要です。

UXというものは、学問や知識としてはものすごく専門的な領域では有りますが、極論的にいえば、事業の現場で実践するためには、「専門的な知識などほとんど不要」です。ベースにある「思考プロセス」さえ、ともすれば「何を意識すべきか」さえ身につけてしまえば、誰にでもできることなのです。

そして、その意味でいえば、起業家たるもの「UX」という役割は、必ず担わなければならないものである、ともいえます。なぜならば、起業というものには必ず「世界をどうしたいか」というWHYが必ず存在します。そのWHYを実現した先には「ユーザになってほしい姿」というのがあるはずです。それは決して独りよがりであってはいけません。そこには価値提供を受けるユーザがかならずいるわけであって、そのユーザを意識することこそが「UX」という役割に求められていることなのです。

つまり、起業家は、創業を決意したときから「UX」の役割を自ずと担っています。その情熱を語ることこそが「UX」にとって重要な役割なのです。スタートアップにとって、それは起業家以上にそれを実践することはできません。だから、UXの専門家など不要なのです。

ビジネスクリエイター、インキュベーター、アクセラレーター、コンサルタント。エンジニアとして、PHP/HTML/CSSのマークアップ言語によるWebサイトの制作、SEOエンジニアリング、アクセス解析アナリストを経験した後、IT領域の技術/潮流をベースとしたエスタブリッシュ企業向けのコンサルタントを経て、複数のIT企業にて、Web/アプリ系、O2O系、IPライツ系の新規事業立ち上げに注力。事業開発から経営企画業務まで、事業および会社立ち上げに関する業務を幅広く経験。また、シードフェーズのベンチャー複数社の立ち上げへの参画や経営戦略・組織戦略・PR戦略へのアドバイザリー、メンター、複数のアクセラレーションプログラムのメンターも手がける。