経営の三要素は「ヒト・モノ・カネ」というのは聞いたことがあると思います。また、近年は、これに加えて「情報・技術」を加えて、経営の五要素とも言われています。
どれも非常に大切なものではありますが、事業部サイドでキャリアを積んできた身でありながら、その経験からも、最も重要なものは「ヒト」である、と思っています。
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自身の手で価値が高められるからこそ「ヒト」が一番重要
その理由は明確で、経営者やマネージメント層が自らの努力によって、努力のみによってでも、その価値を高めることができるからです。それ以外の要素は、努力だけで持っている価値を高めることは難しい。
しかしながら、「ヒト」の価値を短期的に高めるためことができる施策というのはあまりありません。そして、何かひとつで飛躍的に高める秘策もありません。地道にひとつひとつ施策を積み重ねていかなければならないのです。
そういう意味で、事業をグロースハックさせることと、組織・人材をグロースハックさせることは、本質的にやることは変わらないのかもしれません。そう「やることは愚直」に。
ないがしろにすればするほど経営的負債が積み上がる
だからこそ、ないがしろにされてしまうのです。限られたリソースの中で、どちらも愚直にやり続けなければならないとき、それなりにリソースがかかってしまうのであれば、事業を優先してしまう。まずは生き残るために売上を上げることが大切なのだから、それは仕方がないこと。
しかし、そのとき忘れてはならないのです。人事を後回しにすることとは、経営的負債を積み上げることに他ならないということに。
例えば、急成長した後によくあること。スタートアップ初期に採用した人物の大半は、急成長後、お局的お荷物社員になりえます。たいていのスタートアップで対処に困る社員が出てきます。
これは、成長後に人事をきちんと整えた上で採用や育成をした人材と、その目線が全くなかった時代の人材には、大きく差がある、といういい例なのです。
しかしながら、初期に採用し、成長後まで在籍した人物は、ビジョンに共感してここまでついてきてくれた人材に他なりません。その意味においては、成長後に採用したどんな人材よりも、それは強いのです。けれど、だからこそお荷物になってしまうのです。その思いがオペレーションを効率化するフェーズにおいては、邪魔になるから。
ここでとるべき選択肢は2つ。初期に採用した人物は、成長期にとっとと辞めさせることができるような制度設計をしておくか。もしくは、きちんと初期から人事を整え、経営的負債を内在させない努力をし、そうした人材が活躍し続ける組織にするか。
この辺の話については別稿にてもうちょっと深堀するとして、閑話休題。
優先度を下げたとしても、やることをゼロにすべきではない。できることからコツコツと
経営的負債は積み上がれば積み上がるほど、対処が難しくなっていきます。対処不可能な状況になるケースも少なくない。しかしながら、ひとつひとつ積み上げていくことに労力はそれほどかかるものではないんです。たった一つの施策を入れるだけで、とか、たった一言をみんなに伝えるだけでとか、そんなものでもいいんです。
特にスタートアップ初期フェーズなど、人数も限られており、影響範囲が大きいのだから、その本当に小さなたった1つのコトが、経営的負債を小さくすることができるんです。
人事の専門家がいないからできない。入ってからちゃんとやろう。ではないんです。スタートアップの起業家や経営者でもできる、だからこそできる、にしかできないことがあるんです。それをひとつひとつコツコツやる。できる範囲でいいからコツコツやることが大事。
スタートアップに限らず、だが、特にスタートアップにおいて、経営者の最も大切な仕事は、事業を運営することではなく、人事・組織をどうするかを真剣に考え、施策を実施することではないか、と、最近強く思ってます。