最近は役割も変わり、あまりやることもなくなったのだが、一時期膨大な量の書類選考と面接をこなしていた。
面接は、経歴や面接に至った経路にもよるが、30分〜1時間程度の時間を使っている。
その限られた時間の中で、その人のこれまでの職務経歴や仕事への向き合い方、考え方、スキルをヒアリングし、会社のことを理解してもらうのは非常に難しい。
面接を受けに来ていただいた方は、人生の大事な転機に、大切な時間を使って足を運んできているため、真剣に向き合う必要がある。
難しいながらも、それをこなしていくなかで、短い時間のなかで候補者の魅力を最大限引き出して、きっちり評価するための自分なりの(超個人的な)ポイントが絞れてきたので、今回はそれを公開してみる。異論、反論等、色々な意見を聞いてみたいと思ったので。
Contents
候補者のことを最大限引き出すための、5つの質問
いま前職をどう評価しているか
この質問をすると、過半数の候補者は、転職理由をあげる。だが、聞きたいのはそうではない。「評価」を聞いているのだ。
率直に前職に対してどういう感情を抱いているか、客観的に前職を見ることができているか、前職と自分の関係性をどう捉えているか、などといった、辞めようとしているいまだからこその前職に対する総括が聞きたいのだ。
そもそもの質問を少し曖昧にすることで、質問者の意図を正しく理解できるかを図っている。また、ただ単に前職を批判するだけでなく、ポジティブな面も正しく評価できているかといった、公平性も見てとれる。
ネガティブな面は、愚痴のようにそれしか吐露されないとちょっと厳しいが、自身の感情を含めてどう向き合っているかをきちんと面接の場で伝えてくれるかどうかという、正直さも判断できる。
これまでの自分の一番の挫折体験はなにか
どういう挫折・失敗体験があったかという、ただ単にエピソードトークを聞きたいわけではない。
それをどう乗り越え、それが自分にどういう影響を与えたのか、そして、今の自分はそれをどう総括するのかを聞きたいのだ。
自分の挫折体験をきちんと客観的な目線で説明出来る人は、失敗をきちんと自分の糧にしている。ただのエピソードトークしかできなかったり、愚痴や他責の言葉がでてくるようだと、マイナス評価だ。
ビジネスは失敗することが前提である。しかし、そこから成長できることがセットでないと、失敗させることはできない。失敗から学ぶ姿勢があり、成長意欲とその可能性があるかどうかを見極めている。
今後自分がこうありたいイメージはなにか。そのためにいま自分はなにをしているか
自らのキャリアの未来を見据えているかどうか。将来の自分をイメージできているか。明確な目標を胸に思い描いている人ほど、苦境に陥ったとしても這い上がる強さを持っている。
その描いた目標に対して、そこまでのステップを意識した上で、今自分は何をすべきか理解し、それを実践できている人ほど、確実に、着実に成長していく。
年齢が若ければ若いほど、この質問に対して曖昧な返答になってしまうのは仕方がないが、30歳以降の人でこの質問に明確な返答ができないと、マイナス評価が大きくなる。
若ければ、自分の将来像がイメージできてなかったとしても、それの明確化そのものが成長につながる。そのため、減点はしない。もちろん、明確なイメージを持っていた方がより高い評価はしている。(もちろん「起業したい」とか曖昧なものでは加点しないが)
年齢が上であればあるほど、これまで長年働いて、それなりに様々な経験を積んでいるはずである。そして、それを手に、今後5年10年を見据えているだろう。そこにマッチするような(これまでの経験に沿っていても、いなくても)仕事や事業にぴったりハマった時、その人も事業も共に急激に成長するだろうし、また、そこについていった人材も一緒に伸びることができる。
しかし、今後5年10年を見据えられないような人材では、その可能性が低くなる。そんな人に、事業も組織も人も、何かを任せるような信頼を置けない。どう成長させればいいかを、常に一緒にいる自分のことですら見分けられないのに、自分以外である事業や組織や人をどう成長させればいいかなど、見分けられるはずがないからだ。
部下と上司の理想的な関係はなにか
組織における働き方に対して持っている理想像を聞いている。いずれの組織においても上司部下という関係性から逃れることはまずないし、また、今面接をしているということは、少なからずその枠組みに入る、ということになる。
そこで、これまでどういう働き方をしてきて、どういう苦労があり、今、どういう理想像を持っているかを聞きたい。
ちなみにこれだけは唯一模範解答があって、「上司は部下を引き上げ、部下は上司を押し上げ、共に成長していく」関係だ。
なぜ、模範解答があるかというと、自分の部下として働くときや、仮に自分の上司にいずれなったとき、共に働くための価値観を持っているかどうかを図っているからだ。つまり、ボク自身との相性をみている。
最近読んだ本3冊はなにか
最新の情報に触れているか。体系だった情報に触れているか。自らの枠を超える学びを得ようとしているか。
この質問をするだけで、ここまでの面接で候補者が語ってきた成長意欲が本物かどうかわかる。
「これから社会に出ていく若者が意識しておくべき5つのこと」というエントリーでも書いたが、最新の情報に触れるだけなら、新聞だけでいい。いや、最近はネットニュースだけでも十分だ。しかしそれは表層の知識でしかない。
体系化された情報に触れ、全体像を理解した上で、断片的な情報に触れることに意味がある。情報の因果関係や相互関係をしっかり理解することでシナプスがつながっていく。
また、自らの知識の範囲を超える難しい本を無理して読むことで、自身の枠を広げることができる。
ネットサーフィンをしている時、自分の理解を超える情報に触れたとして、それをきちんと理解しようとするだろうか。おそらく、ブラウザを閉じるはずだ。
候補者のことをきっちり評価するための、5つの評価ポイント
正直さ
弱みも強みも正直に話してくれたかどうか。ビジネスにおけるコミュニケーション、特に、新規事業を立ち上げるときには、この正直さは重要になる。
なぜならば、新規事業は失敗が前提であり、失敗を乗り越えた先に成功があるものであって、この失敗を自己保身のために矮小化させたり、隠したりする人間は、失敗から学ぶことができない、失敗を成功につなげることができないからだ。
面接ごときで、自らを偽り、誤魔化し、価値を高く見せようとする人間は、信頼できない。
知性
地頭とも言い換えられる。学力や計算力、学歴や職歴といったものではなく、ベースとしての知性だ。理解力、吸収力といってもいい。
こちらの質問の裏にある意図をしっかり理解して返答しているか。エモーショナルではなく、ロジカルに返答出来ているか。これまでの自分をしっかり客観視した上で総括出来ているか、など。
これは、学歴や職歴が良ければ出来るというものではない。それが良くてもできない人間もいるし、それが圧倒的に悪くてもできている人間もいる。
エネルギッシュさ
元気かどうか、ではない。自分の目標、事業の目標、会社の目標に対して、熱意をもって取り組めるかどうか、だ。
必ずしも表に出さなくてもいい。静かに闘志を燃やすタイプもいる。内に秘めたる熱意であってもいい。
淡々とタスクをこなすのではなく、しっかり仕事として、「事を為す」つまり、WHY=提供価値を理解して、実現し、事業を成長に導けることが大切だ。
質問力
採用した人間を「コマ」として使うつもりはない。それぞれがそれぞれオリジナルの力を持っていて、それをチームとして組み合わせることでレバレッジをかけて、事業を拡大していくことこそが、これからの組織には大切だからだ。
そう考えると、素早くキャッチアップしてチームにとけこめるか、という側面でも、自らの領域外にもスクラム的にきちんと意見や提言ができるか、という側面でも、将来的にファシリテーションしながらプロジェクトマネージメントできるか、という側面でも、この質問力は非常に大切なスキルだ。
真意をついた、ともすれば相手が答えに窮する(あえて答えられない/にくいことに解答を求める、という悪い意味ではなく)ような質問ができるかどうか。そして、求める答えを引き出すことができるかどうか。
キャリアのどのステージにおいても重要で必須のスキルだ。
一緒に働きたいかどうか
「カルチャーマッチ」は、最近良く聞く言葉だが、シンプルにいえば究極的には「一緒に働きたいかどうか」だ。
どんなに優秀で、正直で、知性もあり、エネルギッシュで、質問力があったとしても、「一緒に働きたくない」と思うような人を無理して雇えば、後々後悔することになる。
どんなに優秀な人であっても、チームの雰囲気を壊し、モチベーションを乱し、パフォーマンスを下げるような人とは一緒に働くべきではない。
これは完全にフィーリングだ。しかし、一番重要な側面だ。人間には、どうしても合う合わないはあるし、それは論理的なものではなく、感情的なものであることのほうが多いだろう。その感情を我慢する必要はない。そして、その感性には従ったほうが良い。
ただし、多様性を軽視してもいけない。優秀で多様性を出せるのであれば、雇うべきだ。つまり、これは、単なる「好き嫌い」の話ではないことには注意が必要だ。
ちなみに…面接で聞かないことにしているよくある質問
自己紹介/経歴概要
普通だと、面接のはじめにこの質問をされることからスタートするだろう。僕も初期はこれをやっていた。
しかし、これは時間の無駄だ。なぜならば、事前に候補者から送られてきている履歴書と職務経歴書を読めばすべて書いてあるからだ。
たった、30分〜1時間のなかで評価しなければならないにもかかわらず、事前に読めばわかることをわざわざ再度説明させる意味はない。
書いてある以上の情報などほぼほぼ得られないし、にもかかわらず、書いてあることを読み上げるだけで延々30分話す候補者もいたりする。
これは面接官が、一手間だが事前に書類に目を通すだけで削減でき、面接の効率があがるのだから、削減すべき質問だ。
志望理由
「御社に是非入社したい」と強い思いを持って、狙いを絞り込んで面接に来る人など、まずいない。候補者にとっては、エージェントからすすめられるがままに受けに来た、複数候補の中の一つに過ぎない。
そう、それほど明確な志望理由は持っていないのだ。つまり、聞いたところで薄っぺらい返答しか返ってこないのが世の常だ。
的を得たことを返答してくる人も中にはいるが、それは面接のセオリーとして、面接前にネットで検索できる範囲のことを調べて受けに来たに過ぎない。
ごく稀に、本当の意味での志望理由をもった候補者もいるだろうが、そういう候補者であればこの質問をしなくとも、どこかでその熱意をアピールするはずだ。
どちらに転んだとしても、この質問はいらない。
候補者の強み/弱み
大抵の人は自らの強み/弱みは言語化できるだろう。しかし、それは、面接の場であるからこそ、ありのままを答えるはずもなく、2割も3割も加点したようなものを話すことになる。
特に、「弱み」の話は、それを話しているふりをしながら、「強み」のアピールをしたり、こうやって克服しようとしていますという改善力をアピールしたりするのが常だ。
仮に、この質問は、そんな上っ面の話ではなく、本当の意味での「弱み」が知りたいはずだ。だとしたら、この質問そのものをするのではなく、それを引き出すような質問を別で考えるべきだ。
僕の場合は、基本的にどの質問に対してもエピソードトーク込みで話してもらうようにしており、その総括の中からどんな強み/弱みを持っているかを引き出すようにしている。