複数の企業において新規事業立ち上げを行なってきたシリアルイントラプレナーが、そこで繰り返してきた失敗を主観的に、客観的に記す「イントラプレナー(社内起業、新規事業)の失敗学」。
今回は、社内起業の際に、既存事業のコアアセットとして使えるメリットと、使えると勘違いしやすいメリットについて。
Contents
社内起業で使えるメリット
ブランド力
既存事業のコアアセットは、B2B、B2C含めて、「ブランド力」がもっとも活用しやすい。
ブランド力に基づく信頼は、既存事業がしっかりと続いている限り、強いアセットとなる。
例えば、ベンチャーは、B2Bでパートナーシップを組みたいと思っても、相手の規模が大きければ大きいほど、そしてベンチャーの規模が小さければ小さいほど、そもそもアカウントが開けなかったり、開けても取引額は小さなものに制限されたりすることがある。
ブランドがしっかりしていれば、いるほど、相手から信頼してもらえる度合いは高まる。
また、ブランドから想起されるイメージも同時に強いアセットとなる。
例えば、安全安心な食品を長年提供し続けてきた会社が、保育事業に参入したと聞いたら、なにを思い浮かべるだろうか。おそらく、食育にこだわった保育を目指すんだろうな、と、大多数のひとが想起されるはずだ。
それは、事業内容を聞かずとも、そのブランドから想起されるイメージが定着していればいるほど、新規事業に対しても、同じように想起される、ということだ。
ただ、この点に対しては逆に働くこともある。食品メーカーが、サーバー事業に乗り出す、と言い出したら、大多数のひとは信用しないはずだ。なに考えてるんだ、と思うだろう。
AmazonがAWSに乗り出したときは、たかだか書籍の流通企業がなに考えてるんだ、というのが世間の論調だった。(それが、ストーリーとしての戦略にしっかりなっていたことは、その後、Amazon自身によって証明されているが)
コネクション
大企業であればあるほど、その事業の幅が広ければ広いほど、豊富なコネクションがある。
新規事業を立ち上げようとしたとき、その領域の専門家と容易に会うことができ、容易にパートナーを組むことができるのは、ものすごい強みだ。ベンチャーが専門家に会いたい、ましてや参画してほしいと思っても、よほどのことがない限り難しい。
また、特に公的機関とのコネクションは、ベンチャーにはまったくもって難しい領域だ。許認可制の事業への参入においては、ベンチャーにとっては、許認可制であることそのものが非常に高いハードルになる。
例えば、エンジン付きのキックボードをつくり、行動で走れるようにしたい、とベンチャーが思い描いても、おそらく単独でその世界を実現するのは難しいだろう。そこを、トヨタやホンダ、パナソニック、ソニーなどが本気で乗り出したら、官公庁側も動き出すだろう。(といっても、10数年かかる話だろうが)
社内起業で使える可能性のあるメリット
潤沢な資金
『「社内起業は潤沢な資金ではじめられる」というのは勘違い甚だしい』という記事にも書いたが、入社直後の人材やヒット確率が読めない事業計画に対して、潤沢な資金が使えるというのはまちがっている。
しかしながら、可能性で考えるのだとしたら、ベンチャーよりも大企業の方が潤沢な資金が使える。
例えば、エネルギーなどといった、莫大な設備投資がかかり、回収が長期にわたるような、参入障壁の高い事業には、ベンチャーよりも大企業の方が参入しやすい。
そもそも資金力もあるだろうし、他の事業とともにバルクで発注することでコストメリットも出すことができる。
あなたがマネージメント層から信頼されるに足る十分な実績と評価を手にしていて、会社にとって参入すべき理由が明白で、売上・利益が拡大するストーリーが見えているのであれば、きっとマネージメント層は潤沢な資金を投下してくれることだろう。
社内起業で使えると勘違いしているメリット
優秀な人材
優秀な人材は、新規事業にアサインできない。なぜならば、既存事業で活躍しているからだ。
その人材を外せば、既存事業が落ち込むかもしれないというリスクを抱えているから、優秀な人材が既存事業から外れることはない。(そんなことないのだけれど)
会社として評価が高い人材を活用しようとするのではなく(そして、交渉に時間を使うのではなく)、隠れたキーマンを探し出して登用するのが現実的で最良な選択肢だろう。
(他にもあるとおもうので、考えを整理したら追記予定)