複数の企業において新規事業立ち上げを行なってきたシリアルイントラプレナーが、そこで繰り返してきた失敗を主観的に、客観的に記す「イントラプレナー(社内起業、新規事業)の失敗学」。
今回は、マネージメント層からの指示ではなく、スタッフが自ら新規事業を提案する際に、スタッフが意識しておくべき「会社のステージ」について。
投資家は、どういうチームか、事業の成長性はあるか、参入する市場に成長性はあるか、などの視点で、企業への投資を判断する。
経営者を株主からお金を預かっている投資家と考えたとき、この投資家はいま目の前にある事業をも視点に加える。
この「いまある事業」という視点に対して、新規事業を提案しようとしているスタッフがもっとも最初に意識すべきなのは「会社のステージ」がどのような状況にあるか、だ。
新規事業は、いつでもできるものではないのは、自明の理だろう。会社のステージによって、経営者は新規事業に対する意識が変わる。
Contents
会社のステージごとの、経営者の新規事業に対するスタンス
(a) Seed Stage 〜 (b) Early Stage
シードステージ〜アーリーステージは、いままさに会社を立ち上げて、これから成長していこうとしている段階だ。事業の構想があり、それを事業化するために調査を行い、開発を行い、プロダクトをリリースし、やっと世に出たばかりだ。
このステージでは、まさにプロダクトをつくり、世の中に出し、これから成長していこうというフェーズなわけで、まさにその事業にフォーカスする必要がある。
既存のビジネスモデルをPivotし、さらなるスケールを目指すような話ならまだしも、当然のごとく、このフェーズで新規事業に取り込もうとするような経営者はまずいない。
(c) Middle Stage
ミドルステージは、まさに事業が成長している段階にある。成長率がどんどん伸びていて、どんどん成長している。
だが、どんな事業でも延々と成長していくことはない。成長率は徐々に陰りをみせる。陰りを見せたとしても、既存事業を成長させるために力をいれることは当然やるだろう。
優秀な経営者であればあるほど、そこに力はいれつつも、この成長がここで止まってしまう可能性も、考え始める。
ここが新規事業の提案のしどきのタイミングの1つ目だ。
リスクテイクの意味も、さらに会社を成長させるためにも、経営者は新規事業に取り組む必要性を感じはじめるのだ。
(d) Later Stage
レイターステージでは、市場の状況等の変化によっては、事業の成長が止まり、成熟し、徐々に成長率がマイナスへと転じる。
マイナスへ転じさせる前に、転じさせないために、すべてのヒト・モノ・カネといったリソースを既存事業へと振り分け、一気に再成長を目指すべき状況だ。
そのために、Early Stageで力をいれていた新規事業も、うまくいっていないものを一気に閉じる、という判断に至るステージでもある。
ここで新規事業に力をいれてしまう経営者は、経営センスがない、ともいえる。
(e) Shrink Stage
シュリンクステージは、成長率がマイナスとなり、徐々に事業が衰退していく。
ここが新規事業の提案のしどきのタイミングの2つ目だ。
既存事業のマイナスを止めることもそうだが、マイナスに転じているとはいえ、まだまだ既存事業の売上・利益に余裕があるため、次の会社の成長を創るために、新規事業に取り組もうという意識が強い。
既存事業を諦めたわけではないが、新規事業を作ることで5年後10年後の柱をつくり、もう一度成長曲線を描こう、という考えに至る。
(f) Death Stage
デスステージでは、衰退期も末期だ。あと数年で会社が潰れてしまうかもしれない、という状況になっている。
もう新規事業なんて言葉は出せない。既存事業の出血をいますぐ止めなければならないほどの危機的な状況になっているからだ。
しかしながら、すでに成長率がマイナスに転じて時間が経過しているため、そこへの危機感を感じなくなってしまっている雰囲気も会社に漂う。
そのために、スタッフは誤って新規事業を提案し、経営者にこっぴどく叱られる、というケースが起こりやすい。経営者は、誰よりも危機感を感じているためだ。
Middle StageとShrink Stageで、新規事業の提案をすべし
経営者が新規事業への意欲をもっているMiddle StageとShrink Stageでこそ、提案をすべきだ。
新規事業を経営者に提案しにいって、企画内容うんぬんなく無下にされてしまった経験のある方は、会社のステージを振り返ってみてほしい。
このふたつのステージではない会社においては、そもそも経営者の目線が新規事業にむいていないので、経営者からすれば「そんなことより、既存事業をなんとかする提案をしてくれよ」となってしまう。
それでも新規事業がやりたい、どうしてもやりたい、というのであれば、残された選択肢は、ただひとつ。転職、だ。