サービスが成功するかどうか、というのは結局最終的には、タイミングも含めた「運」という要素が非常に重要だと考えている。
しかし、そこに至るために、「運」以外の要素は潰し切る、というのは大事だ。
その潰し切る、というとき、アプリの企画を考えるときに意識しているのは「ニッチでスタートし、マスへスケールする」だ。
Contents
Lean Back と Lean Forward
ユーザが、情報やコンテンツに触れるときの態度として、Lean Back、Lean Forwardという考え方がある。
Lean Backは受動的に情報を受け取っている状態、Lean Forwardは能動的に情報を取りに行っている状態のことだ。
旧来型のメディアには、ユーザはLean Backよりで情報に触れていた。情報提供者側が情報を取捨選択し、届けているため、ユーザはそれを受動的に受け取っていた、というわけだ。
これは、インターネットが登場しても、同じである。基本的にユーザは、Yahoo!などのポータルサイトにアクセスし、みな均一な情報にまず、Lean Backで触れている。
旧来型のメディアとインターネットの違いは、Lean Backで情報に触れたあと、その情報から別の情報へとHyperlinkでつながっていることである。次々とより深く、より幅広く情報に触れることができるため、態度がLean Forwardに変容することができる。
そのため、PCで見れる情報は、Lean BackとLean Forwardのちょうど中間である、といえる。
さらにインターネットの進化が進み、一方的に発信されるものをすべての人が同じものを見ている、という旧来型のメディアに対し、情報大洪水が起きたことによって、人々が自ら取捨選択することで、よりそれぞれの好みにフィットした情報・コンテンツに触れることができるようになった。
こうして、ユーザはLean Forwardに自分の必要な情報により深く触れることができるようになったのだ。
そして、スマートフォンの登場により、いつでもどこでも手のひらで必要な情報が得られることができるようになったため、ユーザはよりLean Forwardの態度で情報に触れるようになった。
よりバーティカルに、よりパーソナルに
もうひとつの変化として、スマートフォンは、よりパーソナライズドなデバイスである、ということだ。
テレビは、先述のとおり、情報提供者が意図的につくりあげた情報・コンテンツを一方的に配信しているため、そこに触れている人たちはみな均一な情報に触れている。
インターネットも初期は、ほぼ同様だった。みな、Yahoo!などのポータルサイトに触れ、ポータルが編集した情報に、みな均一に触れていた。
フィーチャーフォンもほぼ同様だ。キャリアが取捨選択した情報が、キャリアポータルに掲載されており、ユーザはみなそこから情報を得ていた。
これに対して、スマートフォン、特にアプリというのは、個々人が自分の趣味嗜好にあったものを、自分でインストールしている。スマートフォンというのは「その人」そのものなのだ。
そのため、Lean Forwardである、と同時に、ユーザはポータル的な情報を好まない。まさに自分にフィットしている、ということが、アプリをインストールすることには必要不可欠な感情となるわけだ。
誰にでも、ではなく、自分に対して、語りかけられている、ということを感じなければ、それをインストールしよう、とは思わない。
このとき、アプリ開発で意識すべきことは、「よりバーティカルで、よりパーソナルであるべき」ということだ。
誰でも使える高機能なアプリ、というものをユーザはそもそも求めていない。単機能であっても、まさに自分が使うもの、と思えるものを求めている。
日本の製造業は、よくハイエンド機であっても、そうでなくても、機能が盛りだくさんのものを作りたがる。ほんとにその機能使うの?といったものまで、まんべんなくいれこむ。誰が手にとってもいいように。
アプリでは、そういったことはユーザは求めていない。誰でもいい、は、自分ではない、と思ってしまうのだ。
誰にとってまさによりベターなものなのか、をしっかり意識して、機能は最小限にすべきだ。
ニッチでスタートし、マスへスケールする
かといって、ビジネス的には、当然、ニッチを狙うことが売上・利益の最大化にはならない。マスを狙わなければ、大きな売上・利益をあげることはできない。
しかしながら、前述のとおり、いきなりマスでスタートすることは、現状においては難しいだろう。
LINEでさえ、いきなりマスで利用されるアプリとして作ったとしても、誰も使わなかっただろう。
LINEは最初に若い女性にターゲットを絞りこんだと推測できる。若い女性の間で流行り、同世代の男子や上の世代の男性がそれに引きづられるように使うようになったことで、いまでは誰もが使うアプリへとスケールしていった。
思い起こせば、mixiも同様だと思う。日本では、コミュニケーションサービスをつくるなら、まず若い女性をターゲットにせよ、は、鉄板の戦略かもしれない。
(補足だが、その後mixiから、facebookやTwitterへユーザがうつっていってしまったのは、そのターゲット世代が年数がたつにつれ、年をとり、社会人になっていったとき、サービスが提供しているUXがアンマッチになったことが原因ではないか)
ニッチでスタートし、アーリーアダプターを獲得し、しっかりと仮説検証しながら、マスへスケールするイメージも同時に持つ。それがアプリビジネスを成功させるための、ひとつのベースの考え方ではないか。