複数の企業において新規事業立ち上げを行なってきたシリアルイントラプレナーが、そこで繰り返してきた失敗を主観的に、客観的に記す「イントラプレナー(社内起業、新規事業)の失敗学」。
今回は、新規事業と予算の関係性について。
多くの会社では、新規事業を立ち上げるときに限らず、会社のリソースを使った何かをするためには、計画を立て、予算に入れ込む必要があるだろう。特に、上場企業はそこをきっちりやる必要がある。
そのため、新規事業を立ち上げるために、まず最初にやることは、予算を獲得するための事業計画の策定、というケースが多いとおもう。
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鉛筆を舐めて作る事業計画など無意味だ
はっきりいって、この作業はほとんど無意味だ。
ここで作る「事業計画」というのは、あくまで会社のリソースを使うことの承認を得るための「事業計画」であって、その新規事業を本当の意味で遂行するための「事業計画」ではないからだ。
昨今の市場環境から、起業に対する金銭的なハードル、技術的なハードルが大幅に下がり、ベンチャーが起きやすくなっている。
彼らは、予算も事業計画もない。ただひたすらに、世の中に提供する価値を考え、それに最適なプロダクトを試行錯誤しながら作っている。
そう、いまどきの新規事業というのは、リーンスタートアップよろしく、日々事業を営みながら、フレキシブルに事業計画を組み替えていくのだ。
いわば、事業計画を作ることがそもそも新規事業を創ることであるわけだ。
市場調査もし、プロトタイプも作り、Product/Market Fitを確認し、テストマーケティングやユーザヒアリングを行い、ユーザが本当に求めているプロダクトを探していく。
事業計画が完成したとき。それは、すなわち、ここからグロースしていく方程式が見え、あとは最後のパーツを埋めれば、爆発的にプロダクトが成長することが見えたときだ。
そして、VCなどから資金調達を行い、最後のアクセルを大きく踏む。
本来、ベンチャーが踏もうとしているステップを、机上の空論で鉛筆を舐めながらExcelをいじっているのが、大企業で新規事業担当がやっていることだ。
無駄以外なんでもない。
予算は必達目標となり、目標達成がゴールとなり、無駄な事業運営に時間をとられる
また、そこで作った事業計画が予算化されると、途端に必達目標へと変わってしまう。
フレキシブルに計画が変わっていく途中で、当初考えていた通りに事業が進むことなど滅多にない。
しかし、予算になってしまうと、達成しないとクローズさせられてしまうわけで、結局、事業の本質とは無関係なことで、その目標を必達させるためにどうするか、が、事業運営の中心になってしまい、本当に提供する価値を創出することができなくなってしまう。
そして、目標が未達となり、消滅していく。
大企業での新規事業は、事業計画または予算をつくるところから、すでに消滅が見えているようなケースが多いとおもう。
予算は最小なものからスタートし、フレキシブルに増減を。そのために予算外承認を
期初予算策定の際、なぜか新規事業を見込むことがある。
既存事業での売上/利益の低下を、そこでリカバーしようとするわけだ。
あながち間違っていないし、株主にはそう説明する必要があるかもしれない。
しかし、その文脈と切り離すならば、新規事業は目指すべき売上/利益を、事業のアウトラインも固まる前から決めるべきではない。
常に予算外であるべきだ。
そして、そこから、目の前のフェーズにあわせて必要なリソースを、予算外として承認すればよい。
そうすることで、予算に縛られることなく、フレキシブルな事業運営を行うことができ、事業の本質である課題解決や価値提供へとフォーカスすることができるのだ。