「人財の成長の主体性は会社にあるか、個人にあるか 〜中規模組織が人材育成で陥りがちなワナ」という記事において、ヒトが大切といいながら、人材育成に時間を取るのは難しいという趣旨のことを書いた。
ボク自身、小規模・中規模・大規模の組織を渡り歩いてる中で、明確に人から「育てて」もらったことはない。明確に育成制度が確立している会社にいたことがないからだ。
良きにせよ、悪きにせよ、人から盗んで育ったクチだ。どんな人にもいいところ悪いところはある。悪いところしか目につかなかった人もいた。そんな人のいいところは積極的に盗み、悪いところは消極的に(反面教師として)盗んだ。
しかしながら、自らが「マネージャー」という立場に初めて立った時、自分自身が育つ、ということに盲目的になりすぎて、他者を育てる、というところの知見がごっそり抜けていることに気づいた。そして、困惑した。
困惑しながらも、暗中模索で探り当てた結果、人材を飛躍的に育てるために、意識しておくべきポイントがいくつかあるというのを理解した。今日はそれをまとめてみる。
Contents
成長させるために意識すべき5個のポイント
1. キャリアパスをヒアリングし、それに対していまの仕事がどう活きるのかを伝える
いま目の前の仕事がコツコツ系のルーチンワークだった場合、それがプロジェクト全体にとってなんの意味があるのか見失いがちだ。ましてや、自らにとってどう活きるのか、はさらにわからない場合は多い。
しかしながら、その業務に割り振ったマネージャー側においては、なんのためにそれをやらせているのかは、明確なケースが多い。
やっていればわかるだろう、ということはない。やっていてもわからないものはわからない。マネージャーとスタッフで見えている景色が違うからだ。
思い描いている将来像をしっかりとヒアリングした上で、今の仕事がそれに何に活きるのかは明確に伝えるべきだ。
目指すべき目標を持った人材は強い。
2. 評価点を明確にする
評価点を明確にする、ということは、マネージャーとスタッフが互いに日々、どういう仕事を、どうやってやるか、という擦り合わせをする、ということだ。
擦り合わせもせず、やっていることが違う、と突然評価面談で言われて、納得するだろうか。
最初にどうやるべきかの擦り合わせはきちんとしておくべきだ。
何をすべきかを理解した人材は強い。
3. 良いところは明確に褒め、悪いところはどうすれば良くなるかを明確に伝える
評価点を明確にした後は、日々の業務において、その評価点に沿って明確な評価を伝えるべきだ。
評価点を擦り合わせていたからといって、人と人のコミュニケーションであるから、その認識に齟齬があることは多々ある。たった一度伝えたから、理解している、と思うのはまちがっている。
一度伝えたことから、ズレているのであれば、ズレていると伝えるべきだし、合っているなら合っていると伝えるべきだ。
マネージャーが思っている以上に、スタッフは日々の業務の中で不安に感じることは多い。
だからこそ、その不安を解消し、このまま進んでいいのだ、という自信をもたせる必要がある。
自信をもって前に進んでいる人材は強い。
4. 全員に平等にチャンスを与え、チャレンジをさせる
チャンスは、スタッフの成果を問わず、スキルの有無を問わず、全員に平等に与えるべきだ。
チャンスが偏って与えられていると感じた時ほど、スタッフが不公平感を感じるときはない。
また、出来ない、と思っている人材が、チャンスを与えた時に、その評価を覆すことは多々ある。
誰が出来て、誰が出来ない、などという事前の評価はあてにならず、まずはチャンスを与え、実行させてみることが大切だ。
平等なチャンスと感じたなかで実力を発揮しようとする人材は強い。
5. チャレンジの結果の失敗は攻めない。そこからなにを学ぶかが重要であることを伝える
チャレンジした結果、失敗した時、その失敗を責めてしまっては、チャレンジする文化はうまれない。萎縮してしまうからだ。
スタッフが萎縮した組織に成長はない。組織としてのレバレッジがきかなくなり、マネージャーの器以上に組織が成長しないからだ。
1にも2にもチャレンジすること。そして、その失敗を責めるのではなく、失敗から学ばないことを責めるべきだ。
挑戦が自由に許されていると信じている人材は強い。
成長させたい人材を成長させるためにさらに意識すべき2個のポイント
とはいえ、そうした意識をマネージャーがもっていたとしても、成長する人材としない人材はでてくる。
平等にチャンスは与え続ける必要がある。しない人材と信じていた人間がいつ大化けするかは誰にもわからないからだ。
しかしながら、ドライに、成長する人材をより成長させるのが、組織のレバレッジを大きくするためには効率的だ。
6. マネージャーに引き上げたい人間には、候補であることを明確に伝える
「経営視点」という話がよくあがるが、僕は批判的である。
スタッフ、マネージャー、経営者とみえる景色はすべて異なり、そこに立ってみなければその景色はわからないからだ。
引き上げたい人間には、その景色の一端でもみせるべきだ。ともすれば、その全体像を見るべくあがき、もがき苦しみ、その結果成長するからだ。
だからこそ、マネージャーにしたい人間には、候補であることを伝える、ないし、周りの批判を恐れず、引き上げてしまうことが大切だ。
普段と異なる景色がみえたとき、そこに進もうとする人材は強い。
7. 責任ある仕事を、権限ごと任せる。任せた上での成果は成果で認める。失敗は任せた上司の責任とする
全員に平等に与えるチャンスとそれに対するチャレンジは、失敗していいチャレンジのみである。事業に対する不確定要素の強いものを、できるかできないかわからない人材に任せるのはリスクが高すぎる。
しかしながら、成長させると考えた人材は、会社へのリスクを十分考慮した上でも、任せるべきだ。しかも権限ごと。
その権限がある状態で物事を俯瞰的に考えることを、身を持って体験した時、権限に付随して起こる責務を初めて理解する。前述した「景色」の話だ。
リスクが現実化したとき、それはスタッフの責任ではない。まだ足りていない人材に仕事を任せた上司の責任である。
失敗した時にお前のせいだと後ろから刺されることを考えていては、権限のなかでミニマムに動いてしまう。そうなると、成長はできない。後ろ盾をしっかり感じた上で、その権限の中で最大に動いたことにより、得られるものの方が大きい。
異なる「景色」を体験した時、それを掴み取ろうとする人材は強い。
まとめ
これらを意識することで、これまで出来ないと思っていた人材が、たった1ヶ月で飛躍的に伸びたことを経験した。
まさに目の前で、人が育つ、というのは、ボクをも育ててくれた。
ボクはマネージャーとしてまだまだだと思う。まだまだ意識しないといけないポイントはあると思う。
それでも、ボクがほんのすこしでも誰かのキャリアに寄与できることがあるのなら、そこを突き詰める努力を惜しむ理由はない。
この記事は、気づいたことがあれば、今後、定期的にアップデート版を記載していきたい。