SanSanのTVCMが素晴らしいと思う5つの理由

IT/Web業界では、一時期TVCMには効果がない、と極端な議論が進んだせいで、よっぽど規模が拡大しない限り、ベンチャーがTVCMをうつことはなかった。

しかしながら昨今、グリー、DeNAを皮切りに、ソーシャルゲーム業界で、売上を確保するベースが整ったタイミングで、一気にマスへと拡大する戦略として、TVCMを取り入れている。
まだまだ、日本はアーリーマジョリティやレイトマジョリティには、TVCMが効果的である、ということを多額の金をかけて証明してくれたわけだ。ケーブルテレビの発達もなく、選択肢が5前後しかないのであれば、そこに一極集中するのも頷ける。

もちろん、その流れは、もちろんソーシャルゲーム業界にとどまらず、様々なサービスがマスへの拡大にTVCMを利用しだした。
しかしながら、プロダクトブランディングの観点から、しっかりとクリエイティブを作り込みつつも、作品として完成しているTVCMはそれほど多くはない。

そのなかで飛び抜けて秀逸なものは、SanSanだ。TVでも、YouTubeなどでも頻繁に流れるので、ご覧になった方も多いのではないか。

Contents

SanSanのTVCMが優れている5つの理由

このSanSanのTVCMが優れていると思う理由は、5つある。

1. ネット好きするキャスティング

もちろん、テレビCMだからこそ、単に映像をつくればいいわけじゃない。映像の最初の数秒で引きをつくらなければならない。ぱっと目にした瞬間に最後まで見たいと思わせる必要がある。

となると、このタイミングで話題の出やすいキャスティングであり、商品とかけ離れたイメージではない人物を選ぶ必要がある。

SanSanには、松重豊はぴったりだろう。「孤独のグルメ」での(特にネット層での)人気がある。また、松重豊演じる、井之頭五郎は職業はサラリーマンではないものの、いつもスーツ姿だ。

ぱっとスーツ姿の松重豊が画面にうつり、「してやられたなぁ」とつぶやけば、孤独のグルメのイメージが引き出され、興味を持つ可能性は非常に高い。

2. コミニュケーションストーリーを明確に表現

引きをつくっただけのCMならいくらでもある。その後、きちんとSanSanのプロダクトとしてのコミュニケーションストーリーをうまく組み込んでいる。

SanSanのコミュニケーションストーリーは明確だ。「社内で人脈が共有できていれば、もっと営業がうまくいったのに…」という課題に対するソリューションとして、SanSanは存在する。

この「課題」そのものを映像化したのがこのTVCMである。視聴者に「あるある」とさえ思わせてしまえば勝ちだ。

2. 商品の利便性をシンプルに理解させる

さらに「課題」に対する「解決策」をきちんと提示している。

最後にちらっと流れる小さなキャラクターたちが名刺をもった映像。簡単なピクトグラムになっているともいえる。

前半のドラマ部で「あるある」と思わせた後、それの解決手段をきちんと提示しているわけだ。

4. 頭に残りやすいフレーズ

最後に松重豊がつぶやく「それ、はやくいってよぉー」は、印象に残る。これにより、SanSanへのイメージが確実に定着するはずだ。

「課題」とそれに対する「解決策」がこれで頭にはいったことで、今後、この「課題」が実際自分の身に起こる度に、記憶から呼び起こされるようになっただろう。

5. ショートムービーとして起承転結のあるストーリー

そして、作品としての完成度も高い。その後どうなったんだろう?と続きが気になる内容になっている。

続編や別バーションを流したときに、「あ、あのときの!」と気になり再び見てしまうはずだ。

こうして、記憶の定着がどんどん図れていく。

これらを踏襲しないTVCMにやる意味はない

逆に、明らかにやる意味が意味があったのか理解に苦しむ、TVCMもある。代表格は、やはりロコンドだろう。

近藤正臣さんが「近藤です。ロコンドです。」と叫ぶ。これでユーザになにを理解させたかったのだろうか。

頭に残りやすいフレーズは、あった。確かにあった。そのフレーズは残ったかもしれない。だが、結局なんのサービスだったのか、イメージが湧く人がどれほどいただろうか。そして、アクセスしてみようと思った人はどれほどいただろうか。

消費材ならまだこのタイプのTVCMは効果がある。とにかくキャッチーなフレーズだけを記憶させれば、スーパーにいったときに手に取らせることができるからだ。消費材はスイッチングコストなどないに等しい。流通における面さえ確保できていれば、ただのキャッチーなフレーズも効果的である。

しかしながら、ソリューション型のサービス/商品であればあるほど、フレーズだけのTVCMの意味がどんどん薄れていく。

案の定、ロコンドはすぐにサービス内容をわかりやすく伝えるタイプのTVCMへと変更している。

昨今、大型増資を受けた直後に、マジョリティーへのリーチのために一気にTVCMを投下するサービサーが増えてきている。

ただ投下することに意味があるのではない。名前だけを連呼することに意味があるのではない。ちょっと笑わせることだけに意味があるのではない。

きちんと理解し、覚えてもらうことに意味がある。そして、サービスを使ってもらうことに意味がある。しっかりとそこを意識したクリエイティブつくりをするべきである。

ビジネスクリエイター、インキュベーター、アクセラレーター、コンサルタント。エンジニアとして、PHP/HTML/CSSのマークアップ言語によるWebサイトの制作、SEOエンジニアリング、アクセス解析アナリストを経験した後、IT領域の技術/潮流をベースとしたエスタブリッシュ企業向けのコンサルタントを経て、複数のIT企業にて、Web/アプリ系、O2O系、IPライツ系の新規事業立ち上げに注力。事業開発から経営企画業務まで、事業および会社立ち上げに関する業務を幅広く経験。また、シードフェーズのベンチャー複数社の立ち上げへの参画や経営戦略・組織戦略・PR戦略へのアドバイザリー、メンター、複数のアクセラレーションプログラムのメンターも手がける。