「優秀さ」とは。それを考えたとき、思い浮かぶ要素はなんだろう。
地頭の良さ?泥臭さ?経験?人脈?さまざまな要素はあるだろうが、確実にいえることは「成果を出している人間」を指すことは間違いない。
じゃあ、「成果を出している人間」という人間は「優秀な人材」なのか。
否。「優秀な人材」は「成果を出している人間」を内包するだろうが、「成果を出している人間」は「優秀な人材」であるとは限らない。
「成果を出している人間」というのは、現在所属している組織において、その企業文化や事業、プロダクト、フェーズがその人間にマッチしている、ということに限る。
つまり、「成果」を出しているからといって、絶対的に「優秀である」とは言えないのである。
例えば。
スピードを求められる組織・事業において、そのフェーズでは緻密なロジックを組み立てる人材は求められておらず、泥臭くとも大車輪のように周りを巻き込んで、ゴールまで突っ走る人材こそが「優秀」である。
クリエイティブを求められるサービスにおいて、そのフェーズでは数字分析を得意とする人材は求められておらず、誰も気づいておらず、後々に「ああ、そういうアイデアもあるよね」と思われるような、イノベーティブなアイデアを出せる人材こそが「優秀」である。
必ずしも、ここでいう「緻密なロジックを組み立てる人材」や「イノベーティブなアイデアを出せる人材」が「優秀でない」わけではない。現在の組織において「アンマッチ」というだけである。
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優秀さに絶対的な指標は存在しえない
これはよくよく注意しなければならないことだとおもう。
ベンチャー企業において(社内ベンチャーもしかり)、いかに優秀なメンバーで、早くチームを組成できるか、はかなり鍵になろうとおもう。将来の部長・役員候補は、早い段階でジョインしてもらっておくべきだろう。
そのとき、優秀な人材の過去の実績にとらわれていては、チーム組成において失敗をする可能性が高い。
かくいうボクもその経験はある。
かなり優秀な人材を新規事業の組織に組み入れた。つもりだった。
そのときの人材は、ロジックを組み立て、ペーパーワークを行うことには相当長けていた。その能力をかって組み入れたわけだが、事業のフェーズが違った。シードフェーズにはあわなかったのである。
シードフェーズに求められる人材は、今目の前にある材料だけをもとに、素早く料理を仕上げられることこそが「優秀さ」である。彼は違った。ロジックをしっかり組み立てることに意識がいきすぎており、やれ情報が足りない、やれ権限が足りない、と文句を言い続け、結局、シードフェーズにおいて求められる能力は持ち合わせていなかったのである。
結局のところ、過去の実績に重きをおいてしまったことで、文化やフェーズ、事業内容にアンマッチとなってしまったのである。
組織は箱ありきではなく、人ありき
このアンマッチさをいかに解消するか。
他の組織において「優秀」だった人材をその組織にマッチさせるのか、組織をその「優秀」な人材を中心に組み替えるのか。いずれにしても、そここそがマネージメントの腕の見せ所である。
そういった意味では、前述の経験をした頃のボクには圧倒的にマネージメント能力がなかった。もちろん、いまもまだまだあるとは言いがたいが。
そのアンマッチさのために、マネージメントコストが膨らみ、シードフェーズでかけるべき箇所に力を集中させきれなかったのである。
ある程度の成長フェーズ、成熟フェーズにはいってくれば、人材の幅を広げる必要もあるし、マネージメントコストをかけて、その組織にマッチした次のマネージメント層を育成することは必要であろう。
しかしながら、シードフェーズのベンチャーにその余裕はない。そのため、人材登用はより一層慎重になるべきである。
“優秀さに絶対的な指標は存在しえない”
ボクはこれまでの短いながらもマネージメントをしてきた経験上、組織の文化や事業、プロダクト、フェーズにあわせて、そのとき優秀な人材というのはいかなるものか、の一つの解だ。
組織を組み立てるには箱ありきではなく、人ありきである必要があると考えている。