ユーザに共感を生む「ナラティブストラクチャー」の力

バナー、ランディングページ、ダイレクトメールなど、プロモーションの一貫でユーザと「対話」をするときに、意識しておくとユーザにより共感を生みやすい考え方があります。それは「ナラティブストラクチャー」です。

「ナラティブ」は口語体、「ストラクチャー」は構造。つまり、ナラティブストラクチャーとは「口伝で伝わる物語の構造」のことです。伝説や民話、神話などを指します。わかりやすく「Boy Meets Girl」といったりもします。ラブストーリーのことですね。

ナラティブストラクチャーの「サスペンス」と「カタルシス」が共感をうむ

世の中に存在し、人々に語り継がれる何千、何万という物語は、「ナラティブストラクチャー」によって作られており、それに沿っているからこそ「感動する物語」になっているといわれます。

ナラティブストラクチャーは、「欲求」「障害」「葛藤」「達成」「浄化」という5つのステップで構成されています。

これを「Boy Meets Girl」に当てはめてみます。男の子は女の子と出会い、恋に落ち、付き合いたいという「欲求」を持ちます。しかしながら、その女の子にはすでに付き合っている人がいるという「障害」があります。その障害のために女の子と付き合うことをあきらめようかという「葛藤」があります。しかし、男の子はあきらめずに女の子に告白し、見事付き合うことができたという「達成」に至ります。そしてハッピーエンドをむかえたとき、聞き手は、よかったね、という「浄化」を感じます。

これがナラティブストラクチャーの基本的な構成です。

小説や映画の世界では、「障害」と「葛藤」のことを「サスペンス」といいます。サスペンスは「suspend」という動詞からきています。これは「つるす」「宙に浮かせておく」という意味です。つるされているとハラハラドキドキしますよね。このハラハラドキドキでまず人の心を掴みます。

心理学の世界では、「浄化」のことを「カタルシス」といいます。もともとはアリストテレスが「悲劇が観客の心に怖れ(ポボス)と憐れみ(エレオス)の感情を呼び起こすことで精神を浄化する効果」と定義していますが、要は心の圧迫からの開放によって感じる感情です。サスペンスと向き合うと、ハラハラドキドキします。それによってストレスを感じます。サスペンスを乗り越えた達成を目にしたとき、そのハラハラドキドキは開放され、カタルシスを感じ、感動します。これが共感でもあります。

閑話休題ですが、世の中に存在するエンターテインメントは、すべてこのカタルシスの自作自演です。サスペンス(≒ストレス)を意図的に感じさせ、それからの開放によってカタルシスを感じるから、人々はエンターテインメントにのめりこむのです。

恋愛ストーリーは上述の通りです。例えば、ホラー映画は、映画館でそれを見ているときがストレスであり、見終わって映画館から出たときにカタルシスを感じます。サッカーであれば、ボールがグラウンドを行き来し、相手チームがゴールしそうになるときがストレスで、自分が応援しているチームがゴールしたときがカタルシスです。

プロモーションのクリエイティブをナラティブストラクチャーでつくる

バナー、ランディングページ、ダイレクトメールなど、プロモーションとはユーザにストーリーを伝えて、共感し、購買行動をとってもらうためにあります。

つまり、プロモーションとはユーザーに伝える短いストーリーの中に、いかにサスペンスを感じさせ、いかにカタルシスに到達してもらうかということそのものであり、それを意識すれば、より伝わりやすい、腹落ちしやすい、共感しやすいクリエイティブになるということになります。

例えば、
「欲求」:40歳のあなたは、シミ・シワのない20歳の頃の肌に戻りたいと思いませんか?(→思う思う!)
「障害」:お手入れをすれば少しでも近づく、そうわかっていても毎日家事に忙しくてお手入れはできないですよね(→そうなのよ。忙しくてできないのよね…)
「葛藤」:そこで作りました。この商品で毎日しっかりマッサージするだけで、手軽にシミ・シワの若見え肌が手に入ります(→すごい!…でも本当なの?)
「達成」:実際に効果が出ています!Before-Afterを御覧ください!(→本当に効果が出るのね!これはほしいわ!!)
「浄化」:購入
といったイメージ。

もちろん、これだけで伝わるわけではありませんので、しっかりとそれ以外にも情報を追加する必要はありますが、基本的なストーリーの骨子はこの構造で作ると共感を生みやすくなります。

例えば、バナーにおいては、バナー上になるべくナラティブストラクチャーでいう「欲求」「障害」「葛藤」「達成」をすべて掲載し、そしてそれを読んだ結果「浄化」としての共感を感じるからこそ、クリックへ至るということになります。

ぜひクリエイティブ制作の際には、ひとつの考え方として意識するとよいと思います。

日常的なコミュニケーションでも使えるナラティブストラクチャー

ナラティブストラクチャーは「共感をうむ」ための構造なので、 コミュニケーションという枠の中であれば、様々な場面で活用できます。

例えば、業務指示を出すとき。

いま売上20億なのに「売上200億円を達成しろ!」とだけ上司から指示をされて、やる気がでますか?「そんなん無理だろ」と思いませんか?

これをナラティブストラクチャーで話すと、
「欲求(≒ビジョン)」:僕たちは「お客様が幸福になる手助けをしたい」と思っている。そのために本当にいいものを作ったからこそ、多くの人に届けて、業界ナンバー1の売上として200億円を達成したいと思っている。
「障害」:今のままではとても無理だ。僕達にはそこまで達成させるほどの力はない。
「葛藤」:だからといって、諦めるのか。目標を下げるのか。
「達成(の可能性)」:いや僕たちならできる。これまでこんなに辛い思いをしてPDCAをまわし、A/Bテストもまわしてきた。成果も出始めている。この経験を活かせば達成できるはずだ!
「浄化」:目標は下げずに売上200億を目指そう!みんなで頑張ろう!
と語られたら、ちょっといけそうな気がしません?

ナラティブストラクチャーは、すべてのコミュニケーションに応用できるので、ぜひ活用してみてください。