AppStore大粛清の経緯 〜プラットフォーム上でのリスクを再認識

ここ数週間、AppleによるApp Storeの大粛清が起きている。一連の動きは3つのフェーズに分かれており、「セクシー系アプリ」「位置情報系アプリ」そして、「テンプレート利用アプリ」へと粛清の動きが流れていまる。その動きを追ってみた。

セクシー系アプリ大粛清

まず最初に大粛清が起こったのは、2月中旬のセクシー系アプリだ。ビキニ、肌の露出、そういうことを示唆するアプリをAppleは、大量に削除した。

しかし、有名ブランドなどは、まだ残っているものもあり、一貫したルールが運用されているとは言い難い状況だ。

人気アプリWobble(これには性的な画像は含まれていい)のデベロッパー、Jon AthertonもApple社員から新しいルールについて話を聞き、その結果をまとめた禁止リストを自身のブログに掲載した。

  1. ビキニの女性は禁止(スケートのタイツも禁止)
  2. ビキニ・パンツの男性も禁止(男性のスケートタイツについては尋ねなかった)
  3. 肌の露出は禁止(相手はこれを本気で言った。私はそれなら(イスラム女性の着る全身を覆う)ブルカならいいのかと尋ねた。すると相手は怒り出した。)
  4. Wobbleアプリで女性のバストを揺する(wobble)ことができるのを暗示する可能性があるので、シルエット画像も禁止(これも本気だった。われわれは問題のシルエット画像を削除させられた)
  5. 性的な暗示、ほのめかしはいっさい禁止(ベイビー、ブーブ、セックス、そういった単語はすべて禁止)
  6. 性的興奮を模様させるコンテンツは一切禁止!! (上で禁止された画像で興奮する人間は多くないと思うがAppleの清教徒はWobbleで「過剰に性的」なコンテンツをいくつも見つけてくれたl!)
  7. いかなるアプリも性的な内容を暗示してはならない(Playboyのアプリはまだ掲載されているが、今後はどうなる?)

われわれの知る限りAppleはこの新方針をどこでも公表していない(われわれはAppleに詳細を問い合わせたが返事がない)。上記の新ルールも、おそらくは確固不動のものではないだろうし、Appleは内容を故意にあいまいにしているのだろう。
Apple、App Storeへの規制を強める―水着禁止、スケートタイツ禁止、ほのめかしも禁止

Appleがますますお上品になって、iTunesからセクシーなアプリを削除しはじめた。 新ルールの一つがビキニアプリの禁止、ただしSports Illustrated(またはFHMまたはPlayboy)は例外。たとえばSports Illustratedは、2010年水着アプリを2月9日にiTunesで公開した。この禁止ルールが正式に始まる前ではある。同誌の水着アプリはビキニ姿のモデルが満載だ。(中略)つまりルールはこういうことらしい。セクシーアプリは禁止。ただし、他に金儲けの方法のない雑誌を除く。私はSports Illustratedの水着アプリを早くiPadで見たくてたまらない。大画面用に新しいタッチジェスチャーが開発されるかもしれないし。
他のビキニアプリは禁止しても、Sports Illustratedのセクシー水着アプリを宣伝するiTunes

しかし、削除のポリシーは今ひとつはっきりしない。写真を使ったセクシーものはほとんど削除されているようだが、セクシーな表現がある電子コミックはまだ残っていたりする。「水着は禁止、ただしマンガは除く」といった削除ポリシーなのだろうか……。謎は深まるばかりだ。
ふぉーんなハナシ:iTunesから”セクシー系iPhoneアプリ”が消え去った—-ただし電子コミックは除く? – ITmedia +D モバイル

位置情報系アプリ大粛清

次の起こったのは、3月初旬。今度は位置情報系アプリの大粛清。

今日Appleは東京のスタートアップTonchidotが開発したAR〔拡張現実〕アプリ、セカイカメラ(Sekai Camera)を突然App Storeから削除した。

PlaceEngineを提供しているKoozytが日本のウェブサイトで報告しているところによると、Apple はWi-Fiの利用法に関するルールを変えたようだ。セカイカメラばかりでなく、PlaceEngineを利用している多くのアプリ(iPhone版の Yahoo!Mapsなど)が同時に禁止された。現時点では詳細はつかめていないが、Koozytでは何が問題となっているのかさらに調査中だとしている。
速報:Apple、セカイカメラを禁止―「Wi-Fiアクセスに問題がある」

ダウンロードできなくなっているアプリの中には、セカイカメラやYahoo!地図アプリをはじめ、クウジットの無線LAN測位技術「PlaceEngine」を採用したアプリが含まれている模様。クウジットのWebサイト(http://www.koozyt.com/)やTwitterアカウント「@koozyt」で、「現在、App Store審査(無線LANデバイスへのアクセス方法)により、PlaceEngineを利用したiPhoneアプリが非公開となっており、詳細を確認中です。大変ご不便をおかけして申し訳ありませんが、ご了承ください。」とコメントが出た。対象アプリはWGConnect、Yahoo!地図、セカイカメラ、大江戸妖怪集、DaMoNo、DaMoNo2としている。
なお、これらのアプリ以外にも、Wi-Fiを利用するアプリがいくつかダウンロードできなくなっているのが確認されている。
「セカイカメラ」も対象に:App Storeで一部の位置情報系アプリが配信停止か – ITmedia プロフェッショナル モバイル

fladdictさんの雑感にうまくまとめられている。

■1: SDK違反
ぱっと見PlaceEngineは、普通にiPhone SDKでは実装できない。なので、プライベートAPIやローレベルの何かをゴニャゴニャして、Appleの怒りに触れた可能性が1つ。(中略)もし原因がこのケースだった場合、削除ウンヌンより、SDK回避して作ったものをミドルウェアとして販売して大丈夫なんか?ってことのほうが重要になりそう。

■2: プライバシー・セキュリティーポリシー的な問題
PlaceEngineは、ご存知のとおり現在位置の情報をwifiから独自に取得する。ここがAppleのプライバシーやセキュリティのポリシーに触れた可能性。 iPhoneのGPS系は使用時に現在位置の取得を明示的に表示しているが、wifiで位置情報引っこ抜くことが、ここに抵触をしているケース。(中略)

■3: アップルの潜在的競合とみなされた
将来、Appleがこの分野に手をだす為に、とりあえず潰されたケース。AppleがAdMob Quattro Wirelessを買収した件や、サードパーティの位置情報広告を禁止した件、にからむ流れのケース。(中略)

■4: Skyhook絡み
3のサブケースとしてskyhook絡みの件のケース。 iPhoneの位置情報計測には、 PlaceEngineと同系統の競合技術であるskyhookが採用されている。skyhookとのライセンスで、iPhoneでの位置取得にはskyhookを使うみたいな条項があった場合は、このケースもありえる。この図の場合、PlaceEngineを使われるとskyhookのデータリソースが溜まらないとか、そういう大人なレベルで閉じられる。年度末とか、iPad出すから契約更新とかで厳しくなったとか、そいういうケース。

ライセンスに守秘が絡む場合は馬鹿正直に理由発表できず、結局1番か2番を対外的な理由として発表するだろうから、因果関係の観測が難しい。 対策カードとして独禁とか不正競争防止を切るのも、大事になりすぎるし、そもそもケース1を大義名分にされたら証明しにくい。
fladdict » セカイカメラがAppStoreから消滅な件の雑感

結局のところ、Koozytが狙い撃ちにされたというよりも、なんらかiPhoneの規約に抵触するものがあって、ツールで一括チェックを行い、それに引っかかってしまったものをすべて落としたというのが実態だろう。

プラットフォーマーによる恣意の危険性について語ったが、結局のところ、推測の域を出ないのは、ライセンスに守秘義務が絡むから落とされたアプリ開発者はそれを公にできないし、ましてやApple側がそれを公にすることは考えられない。これはAppStoreでビジネスをする以上、乗り越えられない壁になりつつある。

なお、セカイカメラは一旦PlaceEngineを外すことで、再度公開された。

新バージョンではひとまずPlaceEngineをアプリから取り除き、審査を通過した模様だ。なお、iPhoneは位置情報を取得するための標準のフレームワーク(Core Location)で米Skyhook Wirelessの無線LAN位置測位技術をサポートしており、新バージョンのセカイカメラでも無線LAN機能をオンにすることで位置精度の向上が見込まれる。
「セカイカメラ」復活 フィルタ機能を強化 – ITmedia News

クッキーカッター・アプリも禁止か?

また、いわゆるテンプレートを利用した、RSS等の情報を表示するだけのアプリを禁止していく可能性があることが、TechCrunchの調べで明らかになっている。

デベロッパーたちの意見では、Appleはアプリケーション開発プラットフォームやテンプレートの利用そのものを禁止しようとしているのではないという。しかし、先月あたりから、AppleはRSSフィードや単なる名刺に毛が生えたような単純なアプリの締め出しを始めたらしい。一言でいえば、Appleはウェブアプリで用が足りるような単純なアプリをネーティブなiPhoneアプリで作成するのを嫌い始めたということだ。
警報:Apple、iPhone App Storeでテンプレート利用アプリも禁止か?

こちらはまだ粛清が始まっていないが、今後起こりうる可能性が高いということだ。

まとめと雑感

いずれにしても、「App Storeのセカイカメラ禁止にみる、プラットフォーマーによる恣意の危険性」というエントリーで書いた通り、プラットフォーマーの心変わりで、いつでも虐殺の対象となる可能性があることは確かだ。

App Storeを絶賛する声ばかりが聞かれる昨今だが、プラットフォームの上でビジネスをすることの危険性/リスクもしっかりと認識をしておくべきだ。