WHYは心のスクリーンに映して語れ

想いを純化させ、ピボットの軸とするためにWHYを言語化する

スタートアップの起業家とのメンタリングを通して「WHYを言語化しよう」というお話をよくします。特に、まさにこれからという0→1のシードフェーズの起業家とのメンタリングの初回は、このWHYをとにもかくにも突き詰めて考える時間にしてます。

起業家が本当にやりたいこと、実現したいこと、変えたい世界はどういうものか。原体験ととことん向き合い、何故やりたいのかを問い続け、そこからプロダクトとしてのWHAT、マーケティングや技術論などのHOWを除いた、心の奥底からの想いだけに純化をさせます。

これが基本的には経営理念そのものになります。「あなたの会社は何屋さん?」と聞かれたときの答えであり、これを実現するために事業をやっているのだとも言えます。

仮に、このWHYを実現するためにより最短距離でより効果的な事業が他にあるのであれば、潔くピボットする。そのピボットするための軸となるのがこのWHYです。

よく例にあげるのはミドリムシで有名なユーグレナです。彼らのWHYは、ミドリムシのすごさを世界に知らしめることでも、その生産効率を世界最高にすることでも、クッキーや美容品を売ることでもありません。彼らは「世界から貧困をなくす」ことをWHYとしています。そして同時に、常にこう明言しています。「世界から貧困をなくす手段として、ミドリムシ以上に最適なものが見つかったのであれば、今すぐミドリムシを捨てる」、と。

WHYを「言語化」するのと同様に重要なのは「具体化」することだ

この話は、かなり皆さんに刺さるのか、しっかりWHYの言語化に取り組んでいただいている方が大半なのですが、もうひとつ「言語化」と同じように重要なことがあります。それは「具体化」です。

人間の脳というのは、イメージを言語化する能力は実はそれほどなく、言語を聞いて初めてイメージを浮かべる構造になっているそうです。そのため想いを「言語化」するというのはすごく重要なのです。

そして、「言語を聞いて初めてイメージを浮かべる」とは、「具体的にイメージの湧く言語」を「対話」の中で心に響いたとき初めてイメージを浮かべる、という意味です。言語化という手段を目的化してしまうと、この「具体化」という重要なポイントであることを忘れがちです。

先に例示したユーグレナは、自身のWHYを「貧困博物館の栄養失調のフロアーをインチャージする」とも言います。博物館に展示されるものは、この世からなくなったものである。貧困がなくなったとき、貧困博物館が建つだろう。そこで我々は「栄養失調」のフロアーを創るために今の活動をしているのだ、と。「世界から貧困をなくす」よりも、より具体的な目標のイメージが湧きませんか?

「具体化」とは、「心の中にある映画館のスクリーンに描く」ことである

このイメージの具体化は心の中にある映画館のスクリーンに描くようなものだと考えてください。客観的な視点でものごとを具体化してほしいのです。まず起業家は自身の心の中のスクリーンにWHYが現実化した世界を、具体的にイメージしてください。

そしてそれが固まったら、今度は、共同創業者や初期メンバー(の候補)、投資家、パートナー企業の心の中のスクリーンに、同じような映像を思い浮かべてもらうべく対話をしてください。これができたとき、初めて彼らの心に共感がうまれます。

投資家であれば、感性が鋭く、先を読む力が強く、共感力がある方が多いでしょうから、WHYのワンフレーズを伝えるだけで、ありありとイメージを思い浮かべることができるでしょう。(逆に、投資家が思い浮かべられないとしたら、純化が甘いともいえます)

しかし、普通の人にその力はあるでしょうか。なかなか難しいと思います。起業家が共同創業者や初期メンバーとしての仲間を集められない多くの要因はここにあります。共感をうむ「具体化」されたストーリーを、相手の心のスクリーンに映し出せていないのです。そしてそれは相手にその共感力がないわけではないのです。共感させる力があなたにないのです。

「WHYは心のスクリーンに映して語れ」

これは起業家が周りを巻き込んで前に進むために非常に重要なスキルです。